【 リスクだらけ 】YouTubeの”野球切り抜き動画”の違法性を過去の逮捕事例から考察

この記事には広告が含まれます

 

YouTubeでの野球切り抜き動画をみかけることが増えてきました。
今回はその違法性とインフルエンサーの切り抜き動画との違いについて解説します。

選べる目次
  1. 流行る”切り抜き動画”と逮捕者の出現
    1. ① “切り抜き動画”で国内初の逮捕者
    2. ② 更に民事裁判で5億円の損害賠償請求判決
    3. ③ 2021年を機に続々と逮捕される違法アップロード投稿者
    4. ④ そもそも許可のない”切り抜き動画”自体が違法行為
    5. ⑤ 文化庁の海賊版対策ハンドブックにも明記
  2. 著作権侵害ではないの「著作権者が許可した時」のみ
    1. ① インフルエンサーを中心に広がる切り抜き動画の許可
    2. ② 切り抜き動画の許可の裏にはContent IDの存在
    3. ③ なぜインフルエンサーは切り抜き動画を許可できるのか
    4. ④ “切り抜き動画OK”の場合でも公式に申請が必要
  3. 野球動画の切り抜きは”誰も許可していない”
    1. ① NPB・球団・放送局・配信会社は「違法行為」と明記
    2. ② テレビ映像やネット配信は「権利の束」
    3. ③ 出演者や製作協力者でも刑事告訴は可能
    4. ④ 投稿できれば「YouTubeが許可した」は間違い
  4. “野球切り抜き動画”で逮捕や裁判の可能性
    1. ① 野球切り抜き動画で訴えられた時点で有罪・損害賠償
    2. ② YouTubeの広告収入を得ている場合は尚更アウト
    3. ③ 削除回避をするほど”故意によるもので悪質”と判断
    4. ④ 人気になればなるほど逮捕や裁判のリスクもあがる
    5. ⑤ 報道されるとネット上で拡散され、永久に逮捕歴が残る
  5. 承認欲求の依存と自分だけが追うリスク
    1. ① 過剰な”承認欲求”という呪縛と依存
    2. ② 承認欲求を満たす”依存症”的な背景も
    3. ③ 応援した人たちは何も責任を負わない現実
  6. 今回のまとめ

 

 

– Sponsored by Google –

 

当記事は以下の記事の詳細ページとなります。

 

流行る”切り抜き動画”と逮捕者の出現

 

昨今、SNSやYouTubeでの”切り抜き動画”が流行っておりプロ野球動画でも多くみられます。
以前からプロ野球の動画を編集して投稿する行為はよくみられましたが更に増えてきた印象です。

① “切り抜き動画”で国内初の逮捕者

 

2021年6月にYouTubeでの”切り抜き動画”で国内初の逮捕者がでました。
いわゆるファスト動画と呼ばれるもので、映画を10分程度にまとめて編集した動画です。

ファスト映画による「全体」の被害額はCODAの試算で約956億円とされています。
そうした被害額が多額に膨らんでいる現状を踏まえた上で、今回の逮捕に至っています。

結果、関わった5名が逮捕され、そのうち3名が有罪判決が下りました。
またナレーターを担当した1名は和解が成立し、賠償金1000万円の支払いを命じています。

5名の逮捕者の刑事判決

  • 被告A (主犯 / 25歳男性) : 懲役2年、執行猶予4年、罰金200万円
  • 被告B (25歳女性) : 懲役1年6ヵ月、執行猶予3年、罰金100万円
  • 被告C (42歳男性) : 懲役1年6ヵ月、執行猶予3年、罰金50万円
  • 共犯 (23歳男性) : 不起訴 1000万円超の賠償金で和解
  • 共犯 (女性) : 不起訴

 

ちなみに賠償金1000万円を背負った男性が得た収入はわずか10万円でした。
軽い気持ちで始め”わずか10万円”のために100倍の賠償を請求されることになりました。

youtube動画
参照 : ファスト映画”関与で1000万円の賠償金 / TBS NEWS DIG Powered by JNN【公式】

 

 

② 更に民事裁判で5億円の損害賠償請求判決

 

上記の裁判の罰金額が被害額に対して少額すぎるのではと思う方も多いと思います。
これは刑事裁判の金額で、民事裁判でさらに多額の損害賠償が請求されることになります。

著作権侵害の罰則

罰則
民事 差し止め請求 (著作権法第112条)、損害賠償請求 (民法709条)、不当利得返還請求 (民法703条)
刑事 最高懲役10年又は1000万円以下の罰金、あるいはその両方 (著作権法第119条)

 

2022年11月17日に主犯格2名に対して東京地方裁判所は損害賠償金5億円の支払いを命じました。
また、所在不明の1人も2023年8月24日に損害賠償金5億円の支払いを命じる判決が言い渡されました。

3名の民事判決

  • 被告A (主犯 / 25歳男性) : 損害賠償金 5億円
  • 被告B (25歳女性) : 損害賠償金 5億円
  • 被告C (42歳男性) : 損害賠償金 5億円

 

youtube動画
参照 : 「ファスト映画」巡り賠償命令 無断公開投稿者に5億円 / テレ東BIZ【公式】

 

③ 2021年を機に続々と逮捕される違法アップロード投稿者

 

ファスト映画を機に続々と違法アップロード投稿者の逮捕者されています。
2022年2月15日にファスト映画の違法アップロードで国内2例目の逮捕者がでました。

youtube動画
参照 : 「ファスト映画」インターネットに投稿した疑い ユーチューバーの男逮捕 / khb東日本放送 【公式】

 

 

2022年5月19日に懲役2年(執行猶予4年)、罰金200万円の有罪判決となりました。
ただ、被告は「量刑は不当」として控訴する予定となって今後が注目されています。

日本でも2022年4月からサイバー犯罪を対象としたサイバー警察が本格的指導します。
それに伴い、ファスト映画や漫画に限らず他分野でも摘発事例がみられるかも知れません。

 

その他、違法アップロードの逮捕事例

 

④ そもそも許可のない”切り抜き動画”自体が違法行為

 

切り抜き動画が流行る一方で、その多くが著作権侵害という違法行為に該当します。
どんな動画であれ著作権が発生し、その権利は著作者以外が許可なく利用することはできません。

  1. STEP

    複製権の侵害

    他人の著作物をコピー(複製)する行為

  2. STEP

    翻案権・同一性保持権の侵害

    加工・編集など著作物に手を加える行為

  3. STEP

    公衆送信権の侵害

    他人の著作物をネット上に公開する行為

 

勘違いの多いポイントを解説

よく「編集するしたものはオリジナルで著作権侵害ではない」という方がいます。
それは完全に間違いで、著作権法では“著作物は改変してはならい”と定められています。

同一性保持権 (著作権法第二十条)

著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

著作権法 / e-GOV法令検索

 

つまり、勝手にテロップを入れたり、モザイクをかけたり、編集すること自体が違法。
著作物に関しては“一切手を加えてはならない”というのが現在の著作権法の決まりです。

多くの切り抜き動画がテロップなど様々な編集・加工が行われています。
それら行為は訴えられた場合はすべて著作権侵害と認定されることも知っておきましょう。

 

⑤ 文化庁の海賊版対策ハンドブックにも明記

 

文化庁の海賊版対策ハンドブックにネタバレサイトやファスト映画も新たに明記されました。
つまり、日本の行政機関が正式に無許可の切り抜き動画を”海賊版”と認定したことになります。

2022年に社会的な問題となった上記の著作権侵害に対して令和4年度版に追記されました。

2.海賊版とは

本来、海賊版とは、もとのコンテンツを無許諾でそのまま複製するデッドコピーを指していたが、最近では巧妙化が進んでいる。例えば、漫画の画像自体は使っていなくともセリフやト書きなどを丸写しして、最初から最後までの内容を書き写したようなネタバレサイトや、映画の映像を無断利用し字幕やナレーションをつけた短時間の動画で、映画の内容が結末まで分かるようにしたファスト映画といった侵害形態が現れている。これらの形態は、一見、テキスト部分を引用しているのみ、感想を記載しているのみに見えるが、実態としては正規の著作物から多くのコンテンツを無断で転載・アップロードしており、著作権を侵害する可能性が高い。

インターネット上の著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック 総論

 

PDFをダウンロード

 

– Sponsored by Google –

 

著作権侵害ではないの「著作権者が許可した時」のみ

 

ただし、著作権者が許可している場合は切り抜き動画も問題ありません。
著作者本人および管理会社が認めるのであれば、その時点で合法となるため正々堂々と行えます。

① インフルエンサーを中心に広がる切り抜き動画の許可

 

切り抜き動画はインフルエンサーの影響をきっかけに増えたといっても良いでしょう。
有名な例であればひろゆき氏、堀江貴文氏、HIKAKIN氏が所属するUUUMなどが代表例です。

こうした動きは主にインフルエンサー界隈で今後も広がり増えていくことでしょう。
彼らにとってはそれにより収益性も高まり、認知度を向上させるなどのメリットは多いです。

下記の外部記事では切り抜き動画の再生数ランキングが発表されています。
記事詳細を見ての通り、トップ10の顔ぶれがすべて有名YouTuberとなっています。

② 切り抜き動画の許可の裏にはContent IDの存在

 

YouTubeにはContent IDというシステムがあり、それが切り抜きの許可に繋がっています。
切り抜き動画を認めることで、収益の一部または全てを著作権者が得ることが可能となっています。

Content ID の仕組み

  • 閲覧できないよう動画全体をブロックする
  • 動画に広告を掲載して動画を収益化し、場合によってはアップロードしたユーザーと収益を分配する
  • その動画の再生に関する統計情報を追跡する

Content ID の仕組み /YouTubeヘルプ  

 

つまり、『切り抜きは許可はするけど使用料は貰います』というシステムです。
使用料も一切なしで世界中の人が自由に使って良いと言っている訳ではありません。

多くのYouTuberたちはYouTubeでの広告収入をメインに収益を得ています。
ですので、「切り抜き動画は無条件でご自由にどうぞ」と言っている訳ではないのです。

 

③ なぜインフルエンサーは切り抜き動画を許可できるのか

 

なぜインフルエンサーたちは簡単に切り抜き動画を許可できるしょうか。
ここからは収益性・認知度向上などメリット以外の「権利」に注目して話を進めていきます。

多くのYouTuberは自分たち(会社含む)が出演し、自分たちで撮影編集を行います。
この場合、著作権のすべては自分たちに存在し、動画をどう扱うかの全権を持っています

そのため、切り抜き動画を許可するかどうかも自分次第で決定することが可能です。
どこかに許可をとる必要もありませんし、禁止にしたくなった時はいつでも変更できる訳です。

著作権を持つということはそうことで、すべてにおいて決定権が存在します(著作者人格権)
許可するケースの多くが個人(所属会社含む)で撮影したものが多いことからもわかります。

 

尚、切り抜きOKの人たちも“テレビ出演時の映像もOK”とは言っていません
あくまでも”自分で管理しているYouTube動画に対して許可”しているに過ぎないのです。

個人のチャンネルの切り抜き動画と同時にテレビの映像も切り抜きも目にします。
その場合は、いくら本人から許可をもらっていてもテレビ局の著作権侵害となります。

 

④ “切り抜き動画OK”の場合でも公式に申請が必要

 

とはいえ、切り抜きOKの場合であっても管理事務所への申請が必要です。
切り抜き動画を許可しているとは言っても、無断で自由に使用はできない訳です。

その詳細は下記リンクで割愛しますが、細かい条件のもと許可されています。
氏名やメールの登録はもとより、審査をクリアしないと認めないという条件付きです。

インフルエンサーや著名人の多くの切り抜き動画を管理しているがガジェット通信
ひろゆき氏、堀江貴文氏、田端信太郎を始め、ABEMAやRIZINなど企業も登録されています。

 

成田悠輔氏に関してもGLOBIS知見録の映像を使用する場合は申請が必要です。
もちろん問題のあるチャンネルに掲載されないように審査があり認可制となっています。

【成田悠輔氏の二次創作について】

・成田氏ご本人から申し出があったため、イェール大学助教授 成田悠輔氏の登壇動画のみ、二次創作を認めておりますが、すべて当チャネル運営の「認可制」とさせていただいております。

概要 / GLOBIS知見録公式YouTubeチャンネル

※ 成田悠輔氏以外の登壇者の切り抜きは一切禁止です。

 

また、滝沢秀明氏が社長を務めるTOBEでは「事務所公式動画」に限り切り抜きを許可しています。
ただし、切り抜き動画を収益化する場合は同様に申請が必要でこちらもガジェット通信が管理します。

YouTubeへの投稿に関しては「YouTubeパートナープログラム」による場合は、投稿を収益化することができます。収益化を行なう場合は、提携パートナーであるYoutube MCN「ガジェット通信クリエイターネットワーク」への登録をお願い致します。

ガイドライン / TOBE公式サイト

 

ただし、切り抜き動画も以前のような勢いも無くなったためか停止する人もいます。
ガジェット通信でもDaiGo氏、青汁王子氏は申請を停止し、ヒカル氏は一覧から消えています。

 

– Sponsored by Google –

 

野球動画の切り抜きは”誰も許可していない”

 

ここからは改めて野球動画の切り抜き動画に話を戻したいと思います。
上記のインフルエンサーのように野球切り抜き動画は許可されているでしょうか?

① NPB・球団・放送局・配信会社は「違法行為」と明記

 

調べる限り、NPB・球団・放送局・配信会社すべて許可はしていませんでした。
許可していないというよりも違法行為であるとの記載があり法的処置の文言も記載しています。

 

著作権者が認めていない限りは違法行為として著作権侵害が適応されます。
さきほど紹介したインフルエンサーたちとは異なり「許可しない」と意思表示しています。

 

② テレビ映像やネット配信は「権利の束」

 

テレビ映像や企業のネット配信(個人レベルを除く)は権利の束とも言えます。
映像は単純にテレビ局だけでなく、制作会社や出演者など多くの人が関わり権利が発生します。

  • 放送局の権利 (映像そのものの権利)
  • 原作者・脚本家の権利 (台本など)
  • 出演者の権利 (肖像権など)
  • 音楽の権利 (使用曲など)
  • 使用される著作物の権利 (映像・画像など)

 

テレビ局は映像は、それらすべての権利をクリアした上で放送されています。
様々な条件に対して契約を結ぶことで成立しており、映像として届く仕組みとなっています。

毎日休みなく放送される放送番組は、その一つ一つが“権利の束”であり、放送番組制作に携わる多くの権利者の創作活動により成り立っています。放送局は、これらの権利者の許諾等をとったうえで、番組制作を行う必要があります。

放送番組に関する権利処理 / 一般社団法人 日本民間放送連盟 (※ 規約によりリンクはトップページ)

 

ですので、個人レベルの撮影のように簡単に切り抜きを許可することは100%ありません
もしテレビ局が勝手に許可した場合、テレビ局側が他の権利者から訴えられる可能性があるからです。

 

③ 出演者や製作協力者でも刑事告訴は可能

 

また、テレビ局以外でも刑事告訴をすることも可能です。
映像製作に携わった人は「著作者隣接者」となるので刑事告訴を起こす権利があります。

刑事告訴が可能な人

  • 著作者 (刑事訴訟法230条)
  • 著作権者 (刑事訴訟法230条)
  • 出版権権者 (刑事訴訟法230条)
  • 著作隣接権者 (刑事訴訟法230条)
  • 独占的使用権者 (刑事訴訟法230条)
  • 著作者、実演家の遺族 (刑事訴訟法230条2項)

 

さきほど”権利の束”と説明したように映像は単に放送局のみの権利ではありません。
その映像に関わる人物や会社すべてに権利が生じ、不当な権利侵害を訴えることができます。

 

④ 投稿できれば「YouTubeが許可した」は間違い

 

時折、YouTubeに投稿できれば著作権をクリアしたと思う方がいますがそうではありません。
Google公式プロダクトエキスパートである竹中文人さんは以下のようにツイートしています。

 

投稿できたことで権利をクリアできた訳ではなく、著作権侵害であることに変わりありません
著作物の使用を許可するかどうかの権利はYouTube側にはなく、それは著作権者が決めることです。

ただし、著作権侵害に対してYouTube側が決められることがあります。
それは違反動画の削除と違反アカウントに対するペナルティやそれ以降の監視体制です。

何度もチャンネルを作りなおして著作権侵害を行うアカウントは監視されています。
ここで詳しい内容までは解説しないですが、過去のペナルティはすべて記録が残されています。

 

– Sponsored by Google –

 

“野球切り抜き動画”で逮捕や裁判の可能性

 

ここからは野球切り抜き動画で逮捕や裁判になる可能性について考えます。
説明してきたようにほぼ答えはわかっているかと思いますが改めて整理していきます。

① 野球切り抜き動画で訴えられた時点で有罪・損害賠償

 

結論から言えば、著作権者に訴えられた時点で確実に有罪・損害賠償請求となります。
その中身は程度により変わってきますが、無許可の時点で完全に違法行為とみなされます。

「宣伝になる」などどんな理由をつけたとして正当性が認められることはありません。
個人の思いや立場に関わらず、それが違法であれば法律に沿った形で適切に裁かれます。

“著作権侵害”と聞くと違法性がないように感じてしまうかも知れません。
しかし過去に多くの裁判事例がある通り、著作権者が訴えれば100%負けです。

著作権侵害の罰則

罰則
民事 差し止め請求 (著作権法第112条)、損害賠償請求 (民法709条)、不当利得返還請求 (民法703条)
刑事 最高懲役10年又は1000万円以下の罰金、あるいはその両方 (著作権法第119条)

 

実際に著作権侵害で毎年数百件も警察に摘発されています。
報道が少ないため知らないだけで相当数の人が逮捕や裁判となっています。

※ 「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等 / 警視庁」から作図

 

 

② YouTubeの広告収入を得ている場合は尚更アウト

 

野球切り抜き動画の一部ユーザーは“収益化すること”が目的となっています。
収益化しなくても違法ですが、収益化している場合はさらに訴えられる確率は高まります

収益化してる場合は尚更、損害賠償の請求額は増え、有罪判決も重くなるでしょう。
過去には2018年に比較的少額とみられる6万円を稼いだケースでも逮捕されています。

 

違法な収益額が多いか少なかに関わらず、著作権者が訴えるかどうかです。
いくらもうけていると訴えられ、いくらまでなら訴えられないというものではありません。

「多額な収益では無いし、他にも稼いでいる人はいる」と安易に思いがちです。
しかし、そんなことは一切なく収益化・非収益化に関わらず違法行為に変わりありません。

民法では損害賠償請求とは別に、不当利得返還請求というものもあります。
これは不当に利益を得ている場合に返還請求できるもので広告収入があれば請求できます。

不当利得返還請求について

不当利得返還請求 (民法703条)

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

著作権法第七百三条 / e-Gov法令検索

 

ポイントのまとめ

動画を投稿していても収益化していなければ大丈夫ですか?

収益化・非収益化に関わらず違法行為であり、著作権者によっては逮捕や裁判となります。

 

③ 削除回避をするほど”故意によるもので悪質”と判断

 

最近は様々な方法を使って削除回避を行っているチャンネルも存在します。
ただ、そこまでしていると犯罪だと知っていて“故意”に行っていると判断されます。

  • テレビ局・配信会社のロゴなどを隠す
  • 音声をズラしたり削除する
  • 画像周囲をトリミング加工する
  • アカウント削除後も新規アカウントで繰り返す

 

その場合、「無知で違法アップロードしてしまった」という言い訳は100%通用しません。
巧妙に削除回避を行えば行うほど悪質であると判断され、摘発されるリスクはあがります。

もし裁判になった場合は、故意である点も加味されて判決がくだります。
仮に逮捕や裁判となれば刑の重さや損害賠償請求の額があがる材料になります。

削除回避を行うことが自らの首を絞める結果となります。
巧妙な手口ほど何かあった時に大きな代償を生むということも理解が必要です。

ポイントのまとめ

モザイクなど加工や編集をしていた場合はどうなりますか?

犯罪であると知った上で行っていると判断され、刑の重さや損害賠償請求に反映されます。

 

④ 人気になればなるほど逮捕や裁判のリスクもあがる

 

仮に収益化が上手くできたとしても、人気チャンネルでなければ収益は微々たるものです。
そのため切り抜き動画は躍起やっきになって次々と動画を投稿し、人気チャンネルを目指していきます。

本人はどんどん視聴回数が増えてテンションがあがり高揚感に浸るかもしれません。
しかし、人気が出れば出るほど人の目に触れ、通報されたり著作権者に見つかる機会も増えます

また、2022年からサイバー警察も大幅に強化され取締りも厳しくなる可能性もあります。
野球切り抜き動画で上手くいけばいくほど逮捕や裁判のリスクはどんどん高まるでしょう。

ポイントのまとめ

支持されて人気チャンネルになった場合はどうなりますか?

通報される機会や著作権者の目に止まる機会が増え、摘発されるリスクは高くなります。

 

⑤ 報道されるとネット上で拡散され、永久に逮捕歴が残る

 

昨今は報道されるとSNSやYouTubeなどで一気に拡散される時代となりました。
Twitterなどでは一般人でも実名がトレンド入りするなど多くの人の目に止まります。

また、いわゆる”トレンドブログ“に実名や逮捕歴が投稿され投稿されます。
中には報道されていない家族構成や職場なども公開されている場合もあります。

今の時代は報道されない情報も知り合いがSNSに投稿したりもします。
そのためプライベートな情報も拡散され、家族も同時に巻き込まれていきます。

もし逮捕されたり報道された場合、その時点で仕事も解雇になるでしょう。
職まで失い、実名の犯罪歴が永久にネットに残り続けると思うとゾッとします。

最近は就職時に面接にきた人の氏名をネット検索する企業が増えました。
今後ますますそうした企業が増えていけば再就職すら厳しくなるのは確実です。

  1. 著作権侵害で逮捕
  2. テレビや新聞で実名と顔が報道される
  3. SNSやYouTubeで報道が一気に拡散される
  4. 知人や個人のSNSから家族構成や住所を特定される
  5. 逮捕で職を失い、これら情報がネットに残り続ける
  6. 犯罪歴がネットに残り再就職も難しくなる
  7. クレジットカードや銀行口座の審査も通らない

ポイントのまとめ

著作権侵害で逮捕や裁判となった場合どうなりますか?

ネットで顔や実名を拡散され、犯罪歴が永久にネットに残り続け、完全に消すことはできません。

事例 : 「ファスト映画」逮捕の3人 違法動画100本以上作成か 宮城県警(20210624OA) / khb東日本放送
事例 : 「ファスト映画」投稿の3人 執行猶予付き有罪判決 仙台地裁(20211116OA)/ khb東日本放送

事例 : 「ファスト映画」インターネットに投稿した疑い ユーチューバーの男逮捕(20220215OA) /khb東日本放送

 

– Sponsored by Google –

 

承認欲求の依存と自分だけが追うリスク

 

ここから”そもそも行動がなぜ過剰になっていくのか”について考えていきます。
その背景にある精神的な問題に触れ、最終的に責任を負うのは誰なのかを説明します。

① 過剰な”承認欲求”という呪縛と依存

 

収益目的とは別に、過去に逮捕された事例の複数で共通した発言がみられています。
2022年2月に新聞の野球記事の著作権侵害で逮捕された件で以下のように発言しています。

「閲覧者に褒めてもらって、自己満足したかった」

河北新報記事を無断転載 著作権法違反容疑で書類送検 削除要請も応ぜず / 河北新報

「投稿してほめてもらいたかった。いいねがほしかった」

「いいねがほしかった」河北新報記事のスクショを無断で投稿、著作権法違反容疑で男逮捕 / 日刊スポーツ

 

こうした“承認欲求”の発言は過去の逮捕者にもみられています。
最近でもファスト映画で逮捕された人物も以下のように発言していました。

「1週間で100万回再生されたんですよ、自分の人生の中で唯一の成功体験だった。(ファスト映画は)承認欲求を満たすためです」

“ファスト映画”逮捕前に直撃 / TBS NEWS

 

また、2010年に違法アップロードで逮捕された例でも投稿者は「神」と称賛されていました。
下記記事には記載がないものの、当時の報道で「反応が大きく気持ちが良かった」とコメントしています。

 

② 承認欲求を満たす”依存症”的な背景も

 

以上のように、背景に「認めてもらいたい」「評価されたい」という思いがあります。
彼らはこうした承認欲求を満たすため、度を超えた違法行為へと足を踏み入れるのでしょうか。

悪いことだとは理解していても辞めることができない。
ある種、以下のような“依存症”的な側面も潜んでいるのかも知れません。

依存症ってなに?

人が「依存」する対象は様々ですが、代表的なものに、アルコール・薬物・ギャンブル等があります。このような特定の物質や行為・過程に対して、やめたくても、やめられないほどほどにできない状態をいわゆる依存症といいます。

依存症についてもっと知りたい方へ / 厚生労働省

 

依存症には2種類あり、物質的なものと、プロセスによるものがあります。
今回の件に関しては後者の「プロセスへの依存」の傾向が強いように感じます。

「プロセスへの依存」について

物質ではなく特定の行為や過程に必要以上に熱中し、のめりこんでしまう症状のことを指します。

依存症についてもっと知りたい方へ / 厚生労働省

 

「プロセスへの依存」については以下のような例が該当します。

  • 万引きした商品より”万引きする行為”が快感になる
  • 盗撮する中身より”盗撮するスリル”が快感になる

 

③ 応援した人たちは何も責任を負わない現実

 

冷静によく考えるとわかると思いますが、リスクを背負うのは”自分だけ”です。
高評価やチャンネル登録など支持した人たちは逮捕や裁判となっても何も責任を負いません

仮に逮捕や裁判となっても「やったのは自分じゃないし知らんがな」で終わるだけです。
みんなが応援してくれていると思っていても、いざとなれば知らん顔されるのが現実です。

あおられて気持ちよくなるかも知れませんが、リスクを負うのは自分だけです。
冷静になれば簡単にわかることですが、承認欲求が過剰になると冷静さすらも失います

現在の法律では違法動画を”見るだけ”なら法的罰則はありません。
つまり、他人のために自分だけが人生を棒に振るリスクを背負うということになります。

 

ポイントのまとめ

逮捕や裁判になった場合に見ている人たちの法的責任はありますか?

いくらあおってても見るだけなら法的責任はなく、もともと他人なので知らん顔されるだけです。

 

「違法アップロードの報告方法」の記事を読む

 

– Sponsored by Google –

 

今回のまとめ

 

今回はYouTubeの野球切り抜き動画について話を進めてきました。
インフルエンサーをきっかけに切り抜き動画は以前より大きくみられます。

しかし、切り抜き動画自体は許可がなければ著作権侵害となる違法行為です。
野球中継はインフルエンサーたちのように許可や黙認している訳ではありません。

まったく何も知らずに投稿する人、認知した上で投稿する人さまざまです。
ある日突然、逮捕や裁判と向き合うことになり後悔しないように気を付けましょう。

 

合わせて読んで深く理解しよう

 

 

※ 文章・画像の転載はご遠慮ください