プロ野球はグッズ販売など様々な場面で登録した商標を用います。
今回はプロ野球の商標について調査し、利用に際する注意点を解説します。
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商標と意匠について
商標法では「商標」については第二条に以下のように説明しています。
商標法 第二条
この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの
つまり、企業など商業を行うものが他の企業のサービスと区別するための目印です。
トレードマークなどとも呼ばれ、出所・品質・広告などの機能を果たしてがあります。
① プロ野球における主な「商標」
プロ野球における主な商標は以下の通りです。
球団名、球団旗、ロゴ、マスコット、ユニフォームなど
これらはどの球団のものかの区別が明確でり、すべて商標に該当します。
球団が登録しているものに関しては商用利用の場合は球団の許可が必要です。
② カープのロイヤリティ契約商品
例として、カープのロイヤリティ契約商品を紹介します。
広島のスーパーではこのようなロイヤリティ契約商品を多く販売しています。
③ 商標の他にもある「プロ野球の権利」
プロ野球に関する権利には商標権の他にも存在します。
主なものは人物に対する肖像権と制作物に関する著作権になります。
商標登録には登録申請が必要ですが、肖像権と著作権では登録申請は不要です。
肖像権はその存在があった時点で、著作権は制作した時点で権利が発生します。
※ 肖像権と著作権は登録申請が不要というだけで、他人が無断で使用できせん (違法行為)
プロ野球に関する権利
具体例 | 登録申請 | |
---|---|---|
商標権 | 球団名・球団旗・ロゴ・マスコット・ユニフォームなど | 必要 |
肖像権 | 監督・コーチ・選手・球団職員・審判など人物に関するもの (写真・似顔絵・音声・サインなど) |
不要 |
著作権 | デザイン・映像・音源・写真・音声・楽曲などの制作物 | 不要 |
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プロ野球の商標の登録状況
プロ野球でも多くの商標・意匠が登録されています。
まずはプロ野球12球団とプロ野球関連団体にわけて説明していきます。
① プロ野球12球団の商標
以下がプロ野球12球団の商標・意匠になります。
今回のデータは特許情報プラットフォームから抽出しています。
12球団の商標・意匠
商標 (件数) | 意匠 (件数) | |
---|---|---|
株式会社広島東洋カープ | 90 | |
株式会社読売巨人軍 | 96 | 5 |
株式会社横浜DeNAベイスターズ | 212 | 1 |
株式会社阪神タイガース | 141 | |
株式会社中日ドラゴンズ | 92 | |
株式会社ヤクルト本社 | 13 | |
福岡ソフトバンクホークス株式会社 | 64 | 1 |
楽天株式会社 | 5 | |
株式会社ロッテ | 4 | |
株式会社北海道日本ハムファイターズ | 30 | 1 |
オリックス株式会社 | 5 | |
株式会社西武ライオンズ | 55 |
② プロ野球関連団体の商標・意匠
また、以下がプロ野球関連団体の商標・意匠になります。
プロ野球関連団体の商標・意匠
商標 (件数) | 意匠 (件数) | |
---|---|---|
一般社団法人日本野球機構 | 79 | 6 |
日本プロ野球選手会 | 3 | |
公益社団法人全国野球振興会 | 8 | |
公益財団法人野球殿堂博物館 | 1 |
③ 商標登録の数は断トツでDeNAがトップ
12球団で比較すると商標登録の数は断トツでDeNAがトップです。
逆にロッテ、楽天、オリックスは5件以下とかなり少なくなっています。
その理由に関しては正直よくわかりません。
会社の方針としてあらゆるものを商標登録してるのかも知れません。
いずれにせよ、積極的に商標登録する球団としない球団があります。
グッズ販売などに対する考え方などの違いによるものかも知れません。
既存のロゴなどを使用し続ける球団は申請は不要でしょう。
逆に、新たにデザイン変更する球団はその都度で申請が必要でしょう。
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商標を使用する際は球団の許可をもらう
次に商標を使用する際の注意点にについて解説します。
文字通り、商標権という権利なので使用する際は権利者の許可が必要です。
① プロ野球12球団のロイヤリティ契約
以下に12球団のロイヤリティ契約に関する情報を整理します。
球団によってはホームぺージ上に記載のない球団もありました。
12球団のロイヤリティ契約に関する記載
掲載ページ | 担当部署 | |
---|---|---|
カープ | 商標・肖像利用について | ライセンス部 |
巨人 | 記載なし | |
阪神 | ライセンシー募集 | – |
DeNA | 商標・肖像・著作権・免責事項 | MD部 MD戦略グループ |
中日 | 記載なし | |
ヤクルト | 記載なし | |
ソフトバンク | ライセンス商品及びSPグッズのご案内 | – |
西武 | ライセンシー募集 | – |
楽天 | ロゴ等の使用について | 肖像・意匠・商標 使用申請係 |
日本ハム | スポンサー&パートナー | – |
ロッテ | プロパティ規約 | プロパティ担当 |
オリックス | プロパティ規約 | 事業企画部 商標担当 |
② カープは”条件付き”で無償使用が可能
カープに関しては以下の条件であれば商標の無償使用が可能です。
地域住民の皆様や、地元商店街などの催しもので、カープを応援・支援する目的で使用される場合や、公共機関が公共的な目的で使用される場合に限り、無償とさせて頂きます。
~ 広島東洋カープ 球団商標の無償使用について
上記の通り、公共性のある場合は無償利用は可能です。
地域のイベントや公共事業などの場合がそれに該当します。
時折、「非営利だから好きに使って良い」と思う個人もおられます。
しかし、ホームページにあるように非営利であっても申請が必要です。
また、一個人がSNSで使いたいと申請しても許可はおりないでしょう。
あくまでも地域貢献の一環のためであり、個人利用向けではありません。

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商標利用の無断使用は違法行為
商標権の侵害の訴えがあれば法的に裁かれます。
裁判としては民事と刑事にわけられ、制裁は以下の通りです。
民事と刑事の罰則
ダウンロードできます
① 過去に裁判となった商標権侵害
過去に様々な商標権侵害で裁判となっています。
また、特許庁は2017年に「悪意あった50の商標出願」を公表しました。

ダウンロードできます
以下のように過去にはパロディ商標で裁判となった事例もあります。
みるだけならクスっと笑えますが、自分が当事者となれば複雑ですね。
- BOZU事件 昭和61年(ワ) 第7518号
- KUMA事件 平成24年(行ケ)第10454号
- フランク三浦事件 平成27年(行ケ)第10219号
- SHI-SA事件 平成29年(行ケ)第10205号
② 元プロ野球選手が逮捕される事例も
2020年には元楽天ゴールデンイーグルスの選手が逮捕される事例もありました。
詐欺と商標法違反によるものですが、野球ファンとって残念な報道となりました。
インターネットオークションでの偽ブランド品の販売によるものです。
不起訴となったものの、罰金50万円(妻は30万円)の略式命令となっています。
③ 商標権侵害でなくても「著作権侵害」となる
一部の人は非営利なら使用しても問題ないだろうと思うかも知れません。
確かに非営利であれば商用利用ではないので、商標権侵害には該当しないです。
しかし、ロゴ等には商標権とともに著作権も存在します。
最近ではSNSのアイコンなどで無断転載を目にすることも多くなりました。
許可なく球団ロゴなどをネットで無断使用すると著作権侵害となります。
営利・非営利に問わず、常に何かの権利を侵害していないか注意しましょう。
合わせて読んで深く理解しよう
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今回のまとめ
今回はプロ野球に関する商標権について解説しました。
プロ野球には著作権、肖像権に限らず、商標権も存在します。
グッズなど商品を販売する以上、必要となる権利です。
それら商標は特許庁に申請し、認可される必要があります。
商標は球団にとって収益を生み出すものです。
チームの運営・存続において大事な権利となっています。
多くの権利が存在するプロ野球。
ファンとして守るべきルールを守りながら応援しましょう。
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