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日本のプロ野球選手は著名人の中に含まれます。
今回はプロ野球選手とパブリシティ権の関係性について検討していきます。
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パブリシティ権とパブリシティ権侵害
まずは肖像権から説明していきたいと思います。
肖像権に関しては法制上、明文化された規定はありません。
しかし、肖像権は過去の裁判で以下のように定義づけられています。
「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有する」
また、書籍の中でも”広い意味の肖像権”として以下の3つをあげています。
(1)みだりに撮影等されない権利
(2)撮影された写真、作成された肖像をみだりに利用されない権利
(3)肖像の利用に対する本人の財産的利益を保護する権利~ パブリシティ権概説(第3版) 102-103頁 木鐸社 内藤 篤・田代貞之著
前述した通り、肖像権に関する法律上の明記はありません。
過去の判例より定義されており、“民事訴訟のみ”の扱いとなります。
① 肖像権には「人格権」と「財産権」がある
また、肖像権は「人格権」と「財産権」の2つにわけられます。
人格権は「プライバシー権」、財産権は「パブリシティ権」とも呼ばれます。
- 人格権 (プライバシー権)
- 財産権 (パブリシティ権)
プライバシー権はそのままなので、ここではパブリシティ権について説明します。
一般人の多くは顧客吸引力を持ちませんが、著名人は高い顧客吸引力を持っています。
そうした顧客吸引力を持った著名人には”経済的価値”が発生します。
そのため、企業のCMやイメージキャラクターとして起用され宣伝となります。
「パブリシティ権」とはそういった経済的価値のある人に与えられた権利です。
過去に行われた裁判でも以下のようにパブリシティ権について定義づけられています。
肖像等は、商商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)
② カープ選手出演CMのパブリシティ権
ここからはスカープ選手の実例から説明します。
現在、坂倉将吾選手がアンフィニ広島のCMに、森下暢仁投手がもみじ銀行のCMに出ています。


地元広島では彼らをCMに起用することで注目され、商品やサービスの宣伝となります。
その結果、商品名や企業名は視聴者の記憶に残り、商品の購買意欲に繋げることができます。
当然ながら、こうした経済的価値は一般人にはありません。
一般を起用したところで流し見されるだけで、人の記憶に残ることはほとんどないでしょう。
広島では人気タレントよりカープの選手
広島県では人気タレントよりカープ選手の方が認知度が高いです。
そのためカープ選手は多くのCMでイメージキャラクターとして起用されています。
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プロ野球選手の「パブリシティ権侵害」
説明したように著名人にはパブリシティ権が発生します。
こうした権利を無断で商用利用する場合に「パブリシティ権の侵害」となります。
① パブリシティ権の過去の裁判例
過去の裁判でも、以下のように無断での商用利用は違法行為と判決されています。
人の氏名、肖像等を無断で使用する行為は、(1)氏名,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、(2)商品等の差別化を図る目的で氏名、肖像等を商品等に付し、(3)氏名,肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら氏名、肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(いわゆるパブリシティ権)を侵害するものとして、不法行為法上違法となる。
過去には著名人のパブリシティ権侵害で裁判が行われています。
結果、全ての事例で侵害した側に損害賠償を請求する判決が下されています。
パブリシティ権に関する裁判
パブリシティ権に関する裁判事案 | 判決 |
---|---|
東京地裁判例 昭和53年(ヨ)第6683号 | 製造販売禁止 |
東京地裁 平成17年3月31日判決 平成15年(ワ)第10744号 | 損害賠償請求 |
最高裁判例 平成24年2月2日判決 平成21年(受)第2056号 | 損害賠償請求 |
東京地裁平成25年4月26日判決 平成21年(ワ)第26989号 | 損害賠償請求 出版差止め・廃棄処分 |
東京地判平成25年4月26日判決 平成22年(ワ)第46450号 | 損害賠償請求 |
プロ野球選手のパブリシティ権は過去にも裁判となっています。
無断で使用した場合は、それなりの罰則があることは理解が必要です。
②プロ野球選手のパブリシティ権侵害の例
プロ野球選手であれば以下のような事例があげられます。
- 自ら撮影した選手写真をオークションなどで販売
- 選手写真や球団ロゴを使ってグッズを作って販売
- 自ら撮影した選手写真を集めて写真集を販売
- 選手そっくりの似顔絵を描いて販売
- 無断でお店の広告チラシに選手写真を掲載
- 会社のホームぺージに公認のように写真を掲載
このように選手の経済的価値を利用し、直接的に商用利用するのは侵害行為です。
コンサート会場の周りで勝手にタレントグッズを作って販売しているのも同じですね。
メルカリでの出品は削除対象に
少し前までメルカリでプロ野球選手の写真を販売しているのをよく見かけました。
最近はでは取締りを厳しくし、規約違反として投稿は削除されるようになりました。
③ 応援グッズを作っても販売しなければ大丈夫
人によっては応援グッズを作る自体も肖像権侵害と思った方もいるかも知れません。
ここまで説明したように、グッズを作っても、それを販売しなければ問題ありません。
パブリシティ権の侵害は基本的に「商用利用」を前提としています。
例えば、応援用の内輪を作って、スタジアムで応援する際に使っても大丈夫です。
[ 注意 ] ただし他人の写真やイラストは使わない
ただし、販売していなくても、ひとつだけ注意が必要です。
それは“著作権”の問題で、他人が撮影した写真は無断で使用できません。
例えば、新聞・雑誌の写真やテレビ映像などがそうです。
また、ネットで画像検索しててでてくる画像も同じく他人のものです。
他人の著作物を無断で利用する行為は著作権の侵害となります。
ネット上の写真は自由に使って良いという認識の方もいますが間違いです。
応援グッズなどを作る時は自分で撮影した写真のみにしましょう。
また、自分で書いた選手の似顔絵などのイラストでも問題ありません。
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④ プロ野球選手の偽のサインを販売して逮捕者も
2021年9月22日にプロ野球選手の偽サインを販売したとして逮捕者もでました。
逮捕名は不正競争防止法違反ではありますが、肖像権の侵害としても含まれます。
不正競争防止法違反の場合、以下の罰則が課せられます。
今回の場合は、最下段の”その他の不正競争行為”となると思われます。
罰則 | |
---|---|
営業秘密に係る不正行為 | 十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科 (不正競争防止法21条1項) |
日本国外における 営業秘密に係る不正行為 |
十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科 (不正競争防止法21条3項) |
その他の不正競争行為 | 五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科 (不正競争防止法21条2項) |
今回は肖像権侵害では罰則が軽微なため、不正競争防止法違反での逮捕となったと思われます。
悪質なため民事で済んでしまう肖像権侵害より、逮捕のできる不正競争防止法違反にしたのでしょう。
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プロ野球選手のパブリシティ権を侵害をしない方法
プロ野球選手のパブリシティ権を侵害しないためには球団に許可をとりましょう。
球団と正式にロイヤリティ契約を結ぶことで、選手やロゴを用いた商品化が行えます。
そのためには球団による厳しい審査が必要となります。
当然ながら社会的に問題のあるものや、イメージを崩す内容は審査に通りません。
このように商品化するにはかなりハードルが高いものとなっています。
つまりはプロ野球に関するものを容易に直接的な商用利用はできないということです。
① 12球団のロイヤリティ契約
以下に12球団のロイヤリティ契約に関する情報を整理します。
球団によってはホームぺージ上に記載のない球団もありました。
12球団のロイヤリティ契約に関する記載
掲載ページ | 担当部署 | |
---|---|---|
カープ | 商標・肖像利用について | ライセンス部 |
巨人 | 記載なし | |
阪神 | ライセンシー募集 | – |
DeNA | 商標・肖像・著作権・免責事項 | MD部 MD戦略グループ |
中日 | 記載なし | |
ヤクルト | 記載なし | |
ソフトバンク | ライセンス商品及びSPグッズのご案内 | – |
西武 | ライセンシー募集 | – |
楽天 | ロゴ等の使用について | 肖像・意匠・商標 使用申請係 |
日本ハム | スポンサー&パートナー | – |
ロッテ | プロパティ規約 | プロパティ担当 |
オリックス | プロパティ規約 | 事業企画部 商標担当 |
② ロイヤリティ契約の申請の流れ
基本的なロイヤリティ契約の申請は以下の通りです。
ひとつひとつ確認してませんが、どの球団も大きく変わらないと思います。
- STEP
必要書類提出
企画書や事業書類などを提出 - STEP
球団による審査
許可するのに問題ないかを確認 - STEP
契約及び支払い
正式契約と契約料の支払い - STEP
製品の販売開始
球団公認として正式に販売許可
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プロ野球選手のパブリシティ権のQ&A
プロ野球選手のパブリシティ権のQ&Aを以下にまとめておきます。
パブリシティ権とはなんですか?
著名人が持つ経済的価値のことです。
どんな時にパブリシティ権の侵害になりますか?
選手やロゴなどを用いて無断で商用利用する場合です。
選手の顔を入れた応援グッズなどを作っても大丈夫ですか?
作ったものを販売しないのであれば問題ありません。
パブリシティ権を侵害しないためにどうした良いです?
球団に申請して許可を得ると公認として利用できます。
合わせて読んで深く理解しよう
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今回のまとめ
今回はプロ野球のパブリシティ権について話を進めてきました。
多くの場所やネット上では選手の写真や球団のロゴが利用されています。
その中に、時折パブリシティ権を侵害するものも含まれています。
著名人には経済的価値があり、無断で商用利用することはできません。
パブリシティ権に関しては過去にも多くの裁判が行われてきました。
現在ではそうした判例により、著名人の権利はしっかり守られています。
多くの場合は認識不足でパブリシティ権を侵害しがちです。
パブリシティ権の誤った利用は控え、問題ない範囲で利用しましょう。
合わせて読んで深く理解しよう
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