【 野球記事の無断転載で逮捕 】河北新報の新聞記事を著作権侵害した事例とその背景

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河北新報の野球記事を無断転載して逮捕された報道がありました。
今回はこの件から新聞記事の著作権とその背景にあったについて検討していきます。

 

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当記事は以下の記事の詳細ページとなります。

 

河北新報の野球記事を違法アップロードで摘発

 

2022年2月21日に河北新報の違法アップロードで逮捕された報道がありました。
全国的な報道がなかったため、目立っていませんが問題に対して大きな一歩となっています。

① 書類送検の決定打となった「警告無視」

 

今回の書類送検の概要は以下の通りです。

  • 掲載記事をスクリーンショットしてInstagramに投稿
  • ストーリーズを用いて24時間以内に削除
  • 主にプロ野球や東京オリンピックなど野球記事が中心
  • 再三の削除要請にも応じず違法行為を繰り返した

 

書類送検の決定打となったのが「再三の削除要請を無視」したことにあります。
少なくとも警告後は一旦辞めるケースが多いものの、当事件では警告後も投稿を継続。

結果、“違法行為を辞める意思はなし”と判断されるに至っています。
故意で行っているものと判断されるため警察も動きやすい状況となりました。

 

② 書類送検後は起訴され逮捕や裁判へ

 

上記の通り、今回のケースでは悪質なためおそらく起訴となるでしょう。
その結果、今後は逮捕や裁判となり以下のような罰則が科せられることになります。

著作権侵害の罰則

罰則
民事 差し止め請求 (著作権法第112条)、損害賠償請求 (民法709条)、不当利得返還請求 (民法703条)
刑事 最高懲役10年又は1000万円以下の罰金、あるいはその両方 (著作権法第119条)

 

状況から考えて、河北新報が被害届を取り下げる可能性はないと思います。
起訴後は実名報道され、懲役はなくともある程度の罰金刑を科せられることになるでしょう。

 

③ 河北新報の著作物の利用規定

 

改めて、河北新報の著作物の利用について確認してきます。
河北新報の公式サイトには著作物の利用規約として以下のような記述があります。

記事・写真などの転載お申し込み

河北新報紙面やオンラインの記事、写真、動画などの著作物を転載してご利用になれます。ご希望の場合は、以下のリンク先にあるExcelかPDF形式の申請書に記入の上、メールへの申請書ファイル添付かFAXでお送りください。

著作権/著作物の利用申請 / 河北新報

 

申請用紙の中には使用料金の記載欄もあり、無料で利用できる訳ではありません。
利用には正式な申請書類を提出し、料金を払って、審査を通ることで利用が許可されます。

 

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絶えない新聞記事や写真の無断転載

 

新聞記事の無断転載はSNSが普及した現在は多くの投稿がみられます。
過去には新聞社から直接注意された場面もあり、無断投稿は後を絶ちません。

① 2021年には中国新聞でも無断転載で注意喚起

 

今回と似たような著作権侵害事例は2021年に中国新聞でもありました。
その舞台となったのはTwitterで、カープに関する記事の大量の無断転載でした。

担当者から三度に渡り、Twitter上で注意喚起をされた後にアカウントを削除。
この件では、自ら削除したことにより河北新報のような書類送検には至っていません。

 

中国新聞の無断転載に関する記事はこちら

 

② SNS上やブログでは無断転載が横行

 

昨今、SNSが普及することで新聞記事や写真の無断転載が横行しています。
“無断転載”というと軽く聞こえますが、著作権侵害という違法行為であるのは事実です。

その機序として単に盛り上がって投稿した場合もあればそうでない場合もあります。
後者に関しては、意図的なフォロワー集めやサイトへの誘導が主な理由となっています。

最近は野球ブログのPV集めのためSNSが利用されることも多くなりました。
そのため、SNSで多くのフォロワーを集めてブログへ誘導する手法が用いられています。

単に「感動したから投稿した」とは異なる投稿はSNS野球アカウントでよくみられます。
そうした背景は知らずにフォローしたり、そもそも違法だと知らない方も多いでしょう。

 

③ 新聞記事や写真は著作物

 

新聞は著作物なのかという疑問もある方がいるかも知れません。
新聞はまぎれもなく著作物に該当しますので、しっかりと著作権法が適応されます。

新聞全体は「編集著作物」であり、文化庁のサイトにもその記載があります。

その他,編集物で素材の選択又は配列によって創作性を有するものは,編集著作物として保護されます。新聞,雑誌,百科事典等がこれに該当します。

著作物について / 文化庁

 

編集著作物は著作権法第12条に明記されており、素材を用いた創作性のあるものとしています。

(編集著作物)

第十二条 編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。

e-GOV法令検索

 

編集著作物に該当する例

編集著作物
百科事典、年鑑、辞書、新聞、雑誌、詩集、カタログ、パンフレットなど
(データベースに該当するものは除く)

 

中野秀俊弁護士も動画の2:21から「新聞記事は著作物である」とコメントしています。

youtube動画
参照 : コンテンツの利用について、問題のない方法を解説【著作権】/ 弁護士中野秀俊のYouTube法律相談所 【公式】

 

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著作権侵害を辞められない”背景

 

なぜ著作権侵害を辞められないのでしょうか?
その理由のひとつとして過去に逮捕された人の発言から垣間見えます。

① “承認欲求”という呪縛

 

今回、書類送検された人物が発していた言葉は以下になります。

「閲覧者に褒めてもらって、自己満足したかった」

河北新報記事を無断転載 著作権法違反容疑で書類送検 削除要請も応ぜず / 河北新報

「投稿してほめてもらいたかった。いいねがほしかった」

「いいねがほしかった」河北新報記事のスクショを無断で投稿、著作権法違反容疑で男逮捕 / 日刊スポーツ

 

こうした”承認欲求”の発言は過去にもみられています。
最近でもファスト映画で逮捕された人物も以下のように発言していました。

「1週間で100万回再生されたんですよ、自分の人生の中で唯一の成功体験だった。(ファスト映画は)承認欲求を満たすためです」

“ファスト映画”逮捕前に直撃 / TBS NEWS

 

youtube動画
参照 : 「ファスト映画」インターネットに投稿した疑い ユーチューバーの男逮捕 / khb東日本放送 【公式】

 

また、2010年に違法アップロードで逮捕された件でも投稿者が「神」と称賛されていました。
下記記事には記載がないものの、当時の報道で「反応が大きく気持ちが良かった」とコメントしています。

 

以上のように、その背景に「誰かに認めてもらいたい」「評価されたい」があります。
こうした承認欲求を満たすため、度を超えた違法行為へと足を踏み入れるのでしょうか。

 

② 「みんなもやっている」という安心感

 

SNSをみると新聞記事のスクショが多く投稿されています。
また、新聞社運営のネット配信にある写真の無断転載も多く見られます。

それらはすべて著作権法上では著作権侵害に該当し違法となります。
多くの人がやっていたとしても今回のように逮捕される場合もあります。

スピード違反のように「他の人もやっている」と言っても同じです。
周りがやっているかどうかではなく「違法かどうか」で判断されます。

 

補足 : 引用について

ちなみに「引用」と記載したら何でも許される訳ではありません。
引用に必要な条件を守っていなければ、すべて著作権侵害と判断されます。

 

引用に関する詳細記事はこちら

 

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新聞記事の著作権のQ&A

 

新聞記事関係の著作権のQ&Aを以下にまとめておきます。

新聞記事の無断使用は著作権侵害ですか?

新聞全体は編集著作物、新聞記事は著作物となり著作権侵害です。

新聞記事を使用するにはどうしたら良いですか?

新聞社に連絡して、使用許可をもらうことで使用できます。

使用許可を得なくても使用できる方法はありますか?

ネット上ではURLや引用 (要件を厳守)であれば可能です。

無断で使用した場合はどうなりますか?

訴訟になると損害賠償請求10年以下の懲役刑などの可能性があります。

 

合わせて読んで深く理解しよう

 

「違法アップロードの報告方法」の記事を読む

 

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今回のまとめ

 

今回は河北新報の新聞記事の著作権侵害について話を進めてきました。
再三の注意喚起にも関わらず、無断転載を継続したことが大きな焦点となります。

無視したら大丈夫、みんなもやっているは通用しないということです。
また、その背景として承認欲求など精神的欲求があることも垣間見えます。

今回のように違法であれば著作権者が動けば適切に対処されます。
安易な気持ちや承認欲求で人生を棒に振るような行動は避けましょう。

 

合わせて読んで深く理解しよう

 

 

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