【 プロスポーツ選手と肖像権 】JリーグやVリーグなどの所属選手の肖像権と利用制限

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最近ではSNSやYouTubeやブログなどでプロ野球に関する多くの情報を目にします。
今回はプロ野球に関する著作権・肖像権について法律も用いながら解説していきます。

 

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プロサッカーリーグ所属選手と肖像権

 

まずは日本でも人気スポーツであるサッカー界からみていきます。
ここで取り上げるのはJリーグ、なでしこリーグ、Fリーグの肖像に関する規約です。

① Jリーグの「肖像権」の管理

 

プロサッカーリーグのJリーグでは以下のように規定されています。

第97条〔選手の肖像等の使用〕

(1) 選手は、第87条の義務履行に関する選手の肖像、映像、氏名等(以下「選手の肖像等」という)が報道、公衆送信されることおよび当該報道、公衆送信に関する選手の肖像等につき何ら権利を有するものでない。

Jリーグ規約 (23項)

 

上記の通り、Jリーグに所属する選手の肖像権は「選手は権利を有しない」と記載されています。
つまり、肖像権は選手が保有するものではなく、Jリーグが保有するものであると定められています。

また、その肖像の利用についてもリーグが無償で使用できる旨が記載されています。

第127条〔肖像等〕

(1)Jリーグは、Jクラブ所属の選手、監督およびコーチ(以下総称して「選手等」という)
の肖像、映像、氏名、署名、声、似顔絵、略歴等(以下「肖像等」という)を包括的に
用いる場合に限り、これを無償で使用することができるものとする。

Jリーグ規約 (34項)

 

② なでしこリーグの「肖像権」の管理

 

次に女子プロサッカーリーグのなでしこリーグでは以下のように規定されています。

第90条〔選手の肖像等の使用〕

(1) 選手は、肖像、映像、氏名等(以下「選手の肖像等」という)が報道、放送されることおよび当該報道、放送に関する選手の肖像等の権利を包括的にリーグに許諾する。

なでしこリーグ規約 (18項)

 

なでしこリーグの規約では肖像権は「包括的にリーグに許諾する」としています。
つまり、肖像権は選手ではなく、なでしこリーグが管理ものであると定められています。

 

③ Fリーグの「肖像権」の管理

 

最後にフットサルのリーグであるFリーグの規約になります。

第 94 条〔選手の肖像等の使用〕

1.選手は、第 86 条の義務履行に関する選手の肖像、映像、氏名等(以下、「選手の肖像等」という。)が報道、放送されること及び当該報道、放送に関する選手の肖像等につき何ら権利を有するものでない。

Fリーグ規約 (20項)

 

記述としては、なでしこリーグとほぼ同様の内容ですが結論が逆説的に記載されています。
ここでははっきりと「選手は権利を有しない」と記載し、リーグに許諾という文面ではありません。

 

④ プロサッカー界の肖像権について

 

ここまでサッカー界の肖像権について整理しました。
代表的ないずれのリーグも「肖像権は選手は有せず、リーグが有する」としています。

プロ野球では球団が選手の肖像権を管理すると別記事で投稿しました。
サッカー界ではチームではなく、リーグが”一元的に管理”していることがわかります。

  • プロ野球 球団が管理
  • Jリーグ リーグが管理
  • なでしこリーグ リーグが管理
  • Fリーグ リーグが管理

 

仮に、選手が個人的に有償的な契約を誰かとする際はリーグの許可が必要になります。
選手側が「不当である」と言ったとしても、リーグに所属し契約を交わした時点で同意したものとなります。

 

プロ野球の肖像権に関する詳細記事はこちら

 

⑤ 城彰二氏のYouTubeチャンネルでの選手側の疑問

 

以下で城彰二氏のYouTubeでもご本人が疑問を話しています。
結論としては、左にいるスタッフの方が話していることが正論になります。

仮に選手本人の映像であっても、上記の通り選手側に肖像権はありません。
リーグに所属していた期間の映像や画像は本人であってもリーグの許可が必要です。

また、映像などの著作権に関してもそれを撮影した人や団体が有しています。
肖像権と同様に、仮に映っているのが本人であっても無断で使用することはできません。

以上より、城彰二氏の意見は残念ながら通りません。
規約が改訂されない限りは使用できず、強引に使用すると権利侵害となってしまいます。

 

youtube動画
参照 : 【肖像権】Jリーグ・日本代表・現役時代の画像の権利について物申す! / 【元サッカー日本代表 城彰二】JOチャンネル 【公式】

 

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その他のトップリーグ所属選手と肖像権

 

ここからその他スポーツのトップリーグの規約を紹介します。
野球やサッカーだけでなく、スポーツ界全体の状況が把握できるかと思います。

① Vリーグの「肖像権」の管理

 

またプロバレーボールリーグのVリーグはどうでしょうか。
Vリーグ規約でも同様に肖像権は「選手は権利を有しない」と定められています。

第54条 〔選手の肖像等の使用〕

選手は、バレーボール活動中の選手の肖像、映像、氏名等(以下、「肖像等」という)が報道、公衆送信されることおよび当該報道、公衆送信に関する選手の肖像等につき何ら権利を有するものではない。

Vリーグ規約 (2023年)

 

② B.LEAGUEの「肖像権」の管理

 

プロバスケットボールリーグのB.LEAGUEはどうでしょうか。
B.LEAGUE規約でも同様に肖像権は「選手は権利を有しない」と定められています。

第90条〔選手の肖像等の使用〕

(1) 選手は、選手契約の期間中であるか否かを問わず、第80条の義務履行に関する選手の肖像、映像、氏名等(以下「選手の肖像等」という)が報道、放送されることおよび当該報道、放送に関する選手の肖像等につき何ら権利を有するものでない。

B.LEAGUE規約 (86貢)

 

③ LEAGUE ONEの「肖像権」の管理

 

プロラグビーリーグのLEAGUE ONEはどうでしょうか。
LEAGUE ONE規約でも同様に肖像権は「選手は権利を有しない」と定められています。

第47条〔肖像等の使用〕

(1) 選手は、自らの顔、姿、氏名、署名、声、略歴等(以下「肖像等」という)が、公式試合および公認試合等のテレビ・ラジオ報道、インターネット配信その他の公衆送信およびこれに関する報道その他のメディアにおいて使用されることについて、何ら異議を述べず、権利を行使しない。

一般社団法人ジャパンラグビーリーグワン 規約

 

④ Tリーグの「肖像権」の管理

 

プロ卓球リーグのTリーグはどうでしょうか。
Tリーグ規約でも同様に肖像権は「選手は権利を有しない」と定められています。

第76条 (選手の肖像の使用)

1 選手は、第 68 条の義務履行に関する選手の肖像、映像、氏名等(以下「選手の肖像等」という。)が報道、放送されること及び当該報道、放送に関する選手の肖像等につき何らの権利を有するものではない。

Tリーグ規約 (24項)

 

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プロスポーツ界の肖像権

 

プロスポーツ界の肖像権についてここまでをまとめます。
また、肖像権で発生する財産的価値や侵害した場合のリスクについて解説します。

① プロスポーツ界の肖像権は選手は保有しない

 

紹介してきたように各プロスポーツ団体では肖像権の規約が明記されています。
いずれにおいても肖像権は選手個人ではなくリーグが管理すると定められています。

そのため、肖像権の利用にはリーグの許可が必要となります。
同時に選手が個人的な商業活動を行う場合もリーグの許可が必要となっています。

  • 肖像権の利用にはリーグの許可が必要
  • 選手個人の商業活動もリーグの許可が必要

 

② プロスポーツ選手にはパブリシティ権が発生する

 

プロスポーツ選手の場合、一般的に著名人として扱われます。
それに伴い、経済的な価値が発生することでパブリシティ権も発生します。

過去に行われた裁判でも以下のようにパブリシティ権について定義づけられています。

肖像等は、商商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)

最高裁判例 平成24年2月2日判決 平成21年(受)第2056号

 

応援グッズなどが売れるのもその選手の経済的価値があるためです。
一般人が自分の顔や名前のグッズを作っても経済的価値がないことは理解と思います。

それら選手の経済的価値=パブリシティ権はチームの収益源となっています。
そのため他者が無断で使用することでチームなどに対して損害を与える行為となります。

 

② 肖像権の無断使用があれば裁判のリスクも

 

肖像権の無断使用があれば裁判となるリスクがあります。
過去の裁判でも、以下のように無断での商用利用は違法行為と判決されています。

人の氏名、肖像等を無断で使用する行為は、(1)氏名,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、(2)商品等の差別化を図る目的で氏名、肖像等を商品等に付し、(3)氏名,肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら氏名、肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(いわゆるパブリシティ権)を侵害するものとして、不法行為法上違法となる。

~  最高裁判例 平成24年2月2日判決 平成21年(受)第2056号

 

過去には著名人のパブリシティ権侵害で裁判が行われています。
結果、すべての事例で肖像権を侵害した側に損害賠償を請求する判決が下されています。

パブリシティ権に関する裁判

 

合わせて読んで深く理解しよう

 

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今回のまとめ

 

今回はプロスポーツ選手の肖像権管理について話を進めてきました。
日本国内ではすべての所属選手の肖像権はリーグや球団が管理します。

それに伴い、使用する際にはその団体に許可が必要となります。
選手もその団体に所属した際にそれに同意したこととなり使用できせん。

肖像権は団体が持つべきか、それとも選手が持つべきか。
意見は分かれますが、まずはルールに従う必要はあるでしょう。

 

合わせて読んで深く理解しよう

 

 

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