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SNSで新聞記事の無断使用違法に対して中国新聞社が注意喚起をしました。
今回はこの件から新聞記事の著作性と安全な利用方法について検討していきます。
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当記事は以下の記事の詳細ページとなります。
【 年間691件の検挙 】YouTubeやSNSへの野球中継の違法アップロードの危険性
この記事には広告が含まれます 近年、野球中継や野球番組のネット投稿を多く目にするようになりました。知らないことも多いかと思うので法律に沿った形で違法アップロードについて話を進めます。&nbs...
中国新聞のカープ記事を大量に違法アップロード
中国新聞のカープ記事の違法アップロードについて注意喚起を行いました。
まずはその経緯と中国新聞の記事の利用について話を進めていきたいと思います。
① 大量に違法アップロードを行うSNSに注意喚起
広島地区で契約されている新聞の多くを占めるのが中国新聞です。
地元紙ということでカープに関する記事も豊富で毎日記事が掲載されています。
アプリのダウンロードはこちらから
中国新聞電子版
中国新聞社無料posted withアプリーチ
2021年のある日、野球関係の知人からこんな連絡がありました。
「中国新聞のカープ記事を大量に違法アップロードして注意されている人がいる」とのこと。
知らなかったので確認したところ、確かに中国新聞本社から投稿者が注意されていました。
何度も注意したようですが辞める気配もなく、違法アップロードを続けていたとのことです。
その後、記事使用料の請求とともに本社に連絡するようにとの通知も。
その結果、その違法アップロードのSNSアカウントはアカウント自体を削除していました。
② 中国新聞公式サイトでの新聞記事使用の記載
改めて、中国新聞の記事の使用について調べてみました。
すると中国新聞公式サイトには著作権に対して以下のような記載がありました。
弊社の紙面に掲載された記事、写真、イラストなどは著作権法で保護されています。無断で複製しウェブサイトに転載すれば著作権侵害となります。弊社の記事や写真等をホームページ、ブログなどで利用する場合は事前申し込みが必要です。読者広報部にお申し込みください。許諾の可否、利用条件、料金、注意事項をお知らせします。
つまり、ネット上への中国新聞の記事は許可なく転載できないということになります。
SNSなどに投稿されたりしているのをよく見かけますが、すべて違法行為とみなされます。
利用したい場合は、申し込みを行い、使用料を払うなどの許可を必要とします。
もちろん新聞記事の掲載を許可すべき媒体であるかどうかは事前に判断されます。
中国新聞の問い合わせ先
違法アップロードなどがあれば公式サイトの「問い合わせ」から連絡可能なようです。
③ 主要なスポーツ新聞の二次利用に関する記載
主要なスポーツ新聞の公式サイトを調べる以下のように記載がありました。
詳細はリンクからみて頂くとして、基本的に新聞社への申請が必要となっています。
二次利用に関する記載
掲載ページ | 利用申請 | |
---|---|---|
デイリースポーツ | 著作物の二次利用について | 必要 |
スポーツニッポン | スポーツニッポン新聞の紙面使用申請のご案内 | 必要 |
東京スポーツ | 個人情報・著作権・リンクについて | 必要 |
サンケイスポーツ 夕刊フジ |
記事および写真のご利用について | 必要 |
日刊スポーツ | 「紙面・記事および写真使用申請書」のご案内 | 必要 |
日刊ゲンダイ | 著作権 | 必要 |
スポーツ報知 | お問い合わせ | 必要 |
西日本スポーツ | 記事・写真の利用案内 | 必要 |
中日スポーツ | 著作権について | 必要 |
道新スポーツ | 著作権の利用について | 必要 |
これにより、SNSやブログなどで掲載写真・画像・文章などの無断使用は禁止となります。
許可なく使用した場合は、著作権侵害として法的措置をとられる可能性は十分にあります。
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新聞は「編集著作物」で創作性のある著作物
新聞は著作権があるのかないのか議論となることがあります。
ここからはどういった著作権であるか、過去の判例も踏まえて解説します。
① 「新聞紙は著作物なのか」を著作権法で解説
そもそも新聞は著作物なのかという疑問もある方がいるかも知れません。
新聞はまぎれもなく著作物に該当しますので、しっかりと著作権法が適応されます。
新聞全体は「編集著作物」であり、文化庁のサイトにもその記載があります。
その他,編集物で素材の選択又は配列によって創作性を有するものは,編集著作物として保護されます。新聞,雑誌,百科事典等がこれに該当します。
編集著作物は著作権法第12条に明記されており、素材を用いた創作性のあるものとしています。
(編集著作物)
第十二条 編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
編集著作物に該当する例
例 | |
---|---|
編集著作物 |
百科事典、年鑑、辞書、新聞、雑誌、詩集、カタログ、パンフレットなど (データベースに該当するものは除く) |
②「新聞は事実だから著作権ではない」は間違い
時折、「新聞記事は事実なので著作物ではない」という方がいます。
確かに著作権法で以下に該当するものは著作物にあたらないとされています。
著作物にあたらないもの
- 事実・データ
- ありふれた表現・題名・ごく短い文章
- アイデア
- 実用品デザイン
しかし、新聞記事は”事実を元”に文章構成や写真配置を考えて作られています。
そのため単に事実を並べただけのものとは言えず”創作物”とされ著作権が発生します。
どのような言い回しを使い、どこに画像を配置すると見やすいかなど。
新聞記事は記者が読みやすいように工夫してできあがるので立派な著作物です。
法律上の”事実”というのは、「場所・名前・日時・データなど」を指します。
これら単にこれらを並べただけであれば事実ですが、新聞記事はそうではありません。
過去の裁判では以下のように“新聞は創作物である”と判決されています。
新聞記事は、取材記者、編集記者が「生の事実」に肉薄しようとして、選択し、自らの言葉や表現、論理によって切り取り、報道価値の重みを付け加えた文章表現である。新聞の報道記事のほとんどは、その中に盛り込む事項の選択、記事や論理の展開の仕方、文章表現等に創作性がある。
中野秀俊弁護士も動画の2:21から「新聞記事は著作物である」とコメントしています。
③ 著作権侵害と言っても権利侵害は3つ
簡単に著作権侵害と言っても、その中には様々な権利があります。
違法アップロードによる著作権侵害は一般的に3つの権利侵害が該当します。
- STEP
複製権の侵害
他人の著作物をコピー(複製)する行為 - STEP
公衆送信権の侵害
他人の著作物をネット上に公開する行為 - STEP
同一性保持権の侵害
加工など元の状態に手を加える行為
3つ目は新聞記事を加工して投稿した場合に適用されます。
1つ目と2つ目に関してはネット上に投稿した時点で違法行為が成立します。
著作権侵害の罰則
罰則 | |
---|---|
民事 | 差し止め請求 (著作権法第112条)、損害賠償請求 (民法709条)、不当利得返還請求 (民法703条) |
刑事 | 最高懲役10年又は1000万円以下の罰金、あるいはその両方 (著作権法第119条) |
実際に2022年2月には新聞記事をSNSへの無断転載で逮捕者が出ています。
【 野球記事の無断転載で逮捕 】河北新報の新聞記事を著作権侵害した事例とその背景
この記事には広告が含まれます 河北新報の野球記事を無断転載して逮捕された報道がありました。今回はこの件から新聞記事の著作権とその背景にあったについて検討していきます。 - Spon...
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スポーツ新聞記者の本音
許可のない著作物の利用について記者などからも声があがっています。
Twitterでは日刊スポーツの金子真仁氏が以下のようにコメントしています。
以下私見です。アマ野球担当時代、弊社しか報じていない1次情報を、まとめサイト等が出典もなく転載するケースが複数ありました。悲しいことに当事者に確認せず転用したメディアもあります。取材対象の活躍やご協力で成り立つ私たちの仕事ですが、不誠実に2次情報に加工されるのは不本意です。
— 金子真仁(日刊スポーツ) (@nikkan_kanekob) July 24, 2020
① 新聞記事にはお金も時間もかかっている
新聞記者は取材費や交通費を払い、自ら写真を撮り、時間をかけて記事を作成します。
そうした苦労した上で作られたものを無断で不当な利用をされれば気分も悪いでしょう。
安易な気持ちで新聞を写真にとってSNSに投稿する行為は売上にも影響します。
そうした行為により、新聞社にとって大事な収入源が搾取されているのも事実でしょう。
もちろん新聞社側にも時代にあった改革が必要なのだろうとは思います。
とはいえ、法律で守られている権利を侵害しても良いという訳ではないですね。
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スポーツ新聞記事のネット上での安全な利用方法
次にスポーツ新聞の記事をネット上で安全に利用する方法についてです。
ここでは代表的な4つの方法について説明し、安全な理由についても解説します。
① 撮影やスキャンは「個人利用のみ」に
新聞の写真を撮ったり、スキャンするのは個人利用のみにしましょう。
著作物の個人での利用は「私的使用」として著作権法で認められています。
私的使用のための複製(第30条)
家庭内で仕事以外の目的のために使用するために,著作物を複製することができる。同様の目的であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできる。
ちなみに職場などで新聞などをコピーして配布するのは私的使用にはなりません。
当然ながら業務は仕事ではありませんので私的使用の範疇に入ることはありません。
企業内での配布に関する過去判例
☑ 雑誌記事判例 : 東京地方裁判所 平成19(ワ)15231 平成20年2月26日
☑ 絵画判例 : 知的財産高等裁判所 平成22(ネ)10052 平成22年10月13日
☑ 舞台装置設計図判例 : 東京地方裁判所 昭和48(ワ)2198 昭和52年7月22日
2020年にはつくばエクスプレスが中日新聞と日本経済新聞から提訴されています。
もし、企業内でコピー配布する場合は「日本複製権センター」に連絡しましょう。
部数の制限はありますが使用料を支払うことで合法的に社内配布が可能となります。
② 新聞社に連絡して許可をもらう
最も公式な利用方法は新聞社に申請して許可をもらいましょう。
正当な理由であれば申請は通るでしょうし、公認なので堂々と掲載できます。
各社の記載をみると使用料の支払いは必要となっています。
法人で利用するなど個人レベルでは無いものは許可をとる方が良いですね。
許可を得たら明記する
もし許可を得た場合は、許可を得たことを明記した方が良いです。
許可を得ていても明記していなければ、他人からは著作権侵害に見えてしまいます。
③ 新聞社の公式サイトから同じ記事を探す
SNSやブログなどで他者にシェア(拡散)する際はURLを利用しましょう。
URLとは各記事ごとに付随する「https://〇〇.〇〇」と表記されたものです。
この方法はインターネット創成期から利用されているリンク機能です。
URLを利用して著作権侵害となることは法的に考えてもまずありません。
この形であれば、新聞社のサイトに飛ぶため新聞社にもメリットがあります。
みんなにみてもらいたい記事がある際は、ネット記事のURLで拡散しましょう。
SNSから探す方法も
近年では各新聞社ともにSNSを運用しています。
新聞社の公式SNSアカウントを登録しておけば探すのに便利でしょう。
④ 記事の一部なら「引用」を守れば使用可能
法律上では「引用」を用いれば許可なく利用も可能です。
ただし、引用するためには必ず守らないといけない厳しいルールがあります。
著作物を「引用」する場合は以下の要件を”全て満たす必要”があります。
“いずれか”ではなく”全て”というところも勘違いしやすいので注意しましょう。
文化庁が提示する引用の際に満たす要件
- 他人の著作物を引用する必然性がある
- 自分の著作物と引用部分が明瞭に区別されている
- 主従関係が明確である (自分の著作物が主体)
- 出所が明示されている (48条)
その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない
SNSでの画像や動画の「引用」は現実的に違法
よくTwitterなどで「引用 : 〇〇」とだけ記載している投稿があります。
ただ、それでは引用の要件をひとつしか満せず、問答無用で著作権侵害となります。
SNSで写真を無断使用している多くは引用としてみなされるものではありません。
訴訟になり「引用です!」と言い張っても、それを判断するのは裁判所になります。
SNSで引用としてみなされるものは「一文だけの文章」くらいだと思います。
写真や画像で主従関係が守れるかと言えば、相当長文を記載しない限り無理でしょう。
引用の詳細ついては別記事に記載しています。
【 リツイートも著作権侵害に 】野球映像をSNSやブログで合法的に”シェア”する方法
この記事には広告が含まれます SNSやYouTubeが普及した近年はプロ野球に関する情報はたくさんあります。それら情報を著作権侵害をせずに安全に共有する方法と見る側のリスクについて話を進めま...
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新聞記事の著作権のQ&A
新聞記事関係の著作権のQ&Aを以下にまとめておきます。
新聞記事の無断使用は著作権侵害ですか?
新聞全体は編集著作物、新聞記事は著作物となり著作権侵害です。
新聞記事を使用するにはどうしたら良いですか?
新聞社に連絡して、使用許可をもらうことで使用できます。
使用許可を得なくても使用できる方法はありますか?
ネット上ではURLや引用 (要件を厳守)であれば可能です。
無断で使用した場合はどうなりますか?
訴訟になると損害賠償請求や10年以下の懲役刑などの可能性があります。
合わせて読んで深く理解しよう
「違法アップロードの報告方法」の記事を読む
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今回のまとめ
今回は中国新聞の注意喚起から記事の取り扱いについて話を進めてきました。
SNSでは多くのスポーツ新聞の記事が撮影またはスキャンされて投稿されています。
新聞記事が著作物であるという認識がない方が多くいるのも事実です。
反面、違法行為だとわかっていながらも投稿している方がいるのも事実でしょう。
新聞記事は新聞社にとって収益源となる”財産”です。
時間とお金をかけて取材し、それを販売して新聞社が継続していけます。
不本意な形で無断で使用されたりするのは本人たちにとって残念でしょう。
ネット時代に合わないという意見もありますが、であれば法改正を先にすべき。
ビジネスである以上、予算を組んで、その予算の回収と利益が必要。
改めて、取材してくれることに感謝し、メディアが疲弊することがないよう願います。
合わせて読んで深く理解しよう
※ 文章・画像の転載はご遠慮ください