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球場内の撮影は各球団の公式サイトでルールが公開されています。
今回は球場内での撮影方法の禁止と放送権の関係について解説していきます。
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楽天ゴールデンイーグルスが撮影に関する注意喚起
2022年に楽天ゴールデンイーグルスから撮影に関する注意喚起が発表されました。
ここではその内容について紹介し、それに付随する問題点について触れていきます。
① 「無断撮影・違法配信の禁止」と明記
まずは楽天の球団公式サイトで発表された内容は以下の通りです。
スタジアムでの無断撮影・違法配信の禁止について
スタジアムでの無断撮影・違法配信は第三者の権利侵害となる虞がある上、損害賠償請求等の対象となる場合がございます。
発表されたのは2022年6月6日でまだコロナ禍の時期。
同時にその詳細について公式サイトのスタジアムルールにて記載がありました。
12. 主催者の許可なき録音、撮影、配信についての以下の行為
1. 試合の全部または一部を、インターネットその他メディアを通じて生配信する行為
2. 試合の経過・展開がわかるような長時間の撮影、配信する行為
3. 営利目的での撮影、配信する行為
4. 三脚やカメラ・パソコン等の撮影、配信機材を用いての試合動画の撮影、配信する行為これらの行為は第三者の権利侵害や損害賠償請求等の対象となる場合があります。
② 撮影について注意喚起している要点
今回、発表された注意喚起について少し整理すると以下の2点となります。
- 試合中のライブ配信禁止
- 営利目的での撮影禁止
上記2点について放送権やパブリシティ権などの権利侵害が生じます。
当然ながら、球団はこれら権利で収益を得ており、経営の柱となっています。
昨今、SNSやYouTubeなどへの動画投稿が問題視されてきています。
その理由のひとつとしてこうした権利侵害に対する注意喚起となりました。
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プロ野球12球団の球場内での撮影ルール
楽天以外の撮影ルールはどのようになっているでしょうか。
ここからは公式サイト内にある各球団の撮影ルールを整理していきます。
① 12球団が公式サイトで撮影ルールを公開
まずは各球団の撮影ルールを確認してみました。
それぞれの公式サイト内に記載しており誰でも自由に確認できます。
パ・リーグ
記載箇所 | |
---|---|
ソフトバンク | 観戦マナー・応援ルール ※ 規約によりリンクはトップページ |
オリックス | 観戦ルールとお願い |
日本ハム | ルール&マナー |
ロッテ | スタジアムルール |
西武 | 観戦・応援ルール |
楽天 | スタジアムルール |
セ・リーグ
記載箇所 | |
---|---|
カープ | マツダ スタジアムでのプロ野球開催時におけるお願い |
巨人 | 試合観戦契約約款 ※ 規約によりリンクはトップページ |
阪神 | 観戦マナー ※ 規約によりリンクはトップページ |
DeNA | 観戦時のお願い |
ヤクルト | ヤクルト球団観戦ルール |
中日 | 試合観戦にあたって |
基本的にはNPBが発表している試合観戦契約約款に準じた内容となっています。
試合観戦契約約款に記載している撮影の禁止行為に関する文言は以下の通りです。
第8条 (禁止行為)
(3) フラッシュ、光線、その他これらに類するものを使用した試合妨害の虞のある行為
② ヤクルト・中日・ソフトバンク・西武・ロッテも注意喚起
12球団を調べていくと楽天と同じように注意喚起している球団もありました。
2023年7月現在、ヤクルト・中日・ソフトバンク・西武・ロッテの公式サイトにも記述があります。
ヤクルトスワローズの注意喚起
主催者の許可なく、音声・映像などをインターネット・その他メディアを通じて不特定多数の視聴が可能なものとして生配信または長時間の録画を配信するなど、記念撮影や個人の鑑賞目的以外の目的で撮影する行為
※ 2022年9月1日更新
中日ドラゴンズの注意喚起
中日ドラゴンズなど主催者の許可なく試合の音声・映像などを、インターネットその他メディアを通じて不特定多数の視聴が可能な動画として配信する行為、他の来場者に迷惑を及ぼすような撮影行為は禁止とさせていただきます。
ソフトバンクホークスの注意喚起
(5)主催者の許可なく、音声・映像などをインターネット・その他メディアを通じて不特定多数の視聴が可能なものとして生配信または長時間の録画を配信するなど、記念撮影や個人の鑑賞目的以外の目的で撮影する行為
西武ライオンズの注意喚起
埼玉西武ライオンズなど主催者の許可なく、音声・映像などをインターネット・その他メディアを通じて不特定多数の視聴が可能なものとして生配信または長時間の録画を配信するなど、記念撮影や個人の鑑賞目的以外の目的で撮影する行為
ロッテマリーンズの注意喚起
<一部撮影・配信行為の禁止>
主催者の許可なく試合の音声・映像を、インターネットその他メディアを通じて不特定多数の視聴が可能な動画として生配信する行為や他の来場者に迷惑を及ぼすような撮影行為は禁止とさせていただきます。
いずれも不特定多数に対してインターネットで配信する行為を禁止しています。
YouTubeなどの動画投稿サイトでの試合中のライブ配信を問題視しているようです。
実際に過去にもYouTube上で巨人戦を観客席から配信する動画を目にしました。
こうした行為が球団スタッフが確認し、上記の注意喚起となったのかと思います。
③ 使用ルールを決められる「施設管理権」
こうした施設の使用ルールは施設管理権という権利で守られています。
施設を管理する者がどう使うかを決めることができルールに従わなくてはなりません。
弁護士の方も施設管理権について以下のように述べています。
施設管理権の一環として,『施設内での撮影を禁止する』ことは可能です。
一例として,『内装,人物はNG,料理のみ撮影OK』ということも可能です。
これに反して無断で撮影した場合,施設管理権を侵害したことになります。
野球場でも同じくこの施設管理権は存在します。
問題が生じた場合は状況によっては逮捕される場合もあるので注意が必要です。
撮影とは異なりますが、2023年には観客が暴徒化したことで永久追放となりました。
このようにルールを逸脱する行為は厳しく処分され、二度と観戦すらできなくなります。
臨時の天皇杯実施委員会と理事会を来月初旬にも開く
【浦和】史上最大の厳罰、天皇杯出場権はく奪&悪質サポーター永久追放 暴徒化騒動受け協会検討 #天皇杯 #浦和レッズ #j1https://t.co/6Ldxm4u8yz— 日刊スポーツ (@nikkansports) August 22, 2023
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放送権侵害と損害賠償請求
ここからはスポーツ中継の放送権と権利侵害について考えていきます。
当然ながら権利侵害を行うと訴訟のリスクも生じてくるので注意が必要です。
① スポーツ中継の放送権(放映権)は高額契約
プロ野球中継には各球団の放送権が存在します。
放送権は法律上明記されていませんが、ビジネス上の権利として認められています。
実際にオリンピックやW杯などの中継に多額な金額が支払われるのは周知の通り。
プロ野球でも2019年に巨人がDAZNと90億円の契約を交わしたと話題にもなりました。
- 2023年 / Jリーグ 2,395億円 (11年契約)
- 2019年 / 巨人 20億 (5年契約)
以上のように、プロスポーツ中継の放送権は高額な契約が交わされます。
各競技にとってその放送権の契約はチーム運営にとって大きな柱になります。
② 民法709条の利益保護と利益侵害
法律に目を向けてみると、民法709条には以下のような文面があります。
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
これは撮影に直接関係するものではありませんが、法律で利益を保護するものです。
スポーツ中継の場合、球団や放送局の利益を生むものであり、その利益も保護されます。
③ 放送許可権は球団が有する
日本プロフェッショナル野球協約では以下のように記載があります。
第44条 (放送許可権)
球団は、それぞれ年度連盟選手権試合のホーム・ゲームにつき、ラジオ放送及びテレビジョン放送(再生放送及び放送網使用の放送を含む)、有線放送並びにインターネット及び携帯電話等を利用した自動公衆送信(いずれも、海外への、及び、海外での放送及び送信を含む。)を自由に許可する権利を有する。
上記の通り、プロ野球の放送権は独占的に球団が権利を保有しています。
第三者が無許可で試合を配信するということはこの権利を侵害することになります。
独占的な権利を侵害するということは独占的な利益も侵害します。
結果、無断配信や利益目的の撮影は利益損失になり得るため民法709条の違反となります。
④ スポーツ中継の無断配信と法律的側面
また、弁護士・弁理士の書籍の中でも権利侵害であるとの記載もあります。
施設管理権という物権的権利を侵していないとしても,スポーツビジネスにおいて,「放送権」という権利が高額で取引されていることを知りながら,そのような行為に及ぶということは,一種の債権侵害であると捉えて,不法行為責任が発生するという見解もある。
また、別の弁護士は不法行為の必要条件について言及もされています。
債権侵害の不法行為が成立する場合として、第三者が放送権(債権)の存在を知っていて、これを害する意思が必要で、侵害の程度が著しい(違法性が高い)ことが必要
上記のように故意に他人の権利や利益を侵害した場合は損害賠償の対象となります。
プロスポーツ中継では契約していない第三者が配信した場合はそれに該当するでしょう。
⑤ 他のプロスポーツも試合中の配信行為は禁止
プロ野球以外のプロスポーツでは試合中の配信行為をどうみているのでしょうか。
結論としては、基本的はどの競技も一定時間以上の試合中の配信を禁止しています。
例えば、Jリーグ公式サイトでは以下のような記載があります。
第4条 (禁止行為)
11. 試合の音声または映像の全部または一部を、インターネットその他メディアを通じて配信する行為
また、Vリーグ公式サイトでも同様の文章が記載されています。
(6) 撮影マナーを守ってください
3. 商業目的、Vリーグ機構ならびに第三者の権利を侵害する形で大会の映像や静止画、音声の全部または一部を、各種メディアを通じて配信することは禁止されています
さらに試合動画の投稿についても禁止や時間指定のルールがあります。
野球に比べて厳しいルールがありますが、詳細については以下の記事を参照ください。
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今回のまとめ
今回は球場内の撮影に関する禁止事項について話を進めてきました。
基本的には試合中のライブ配信や利益目的の撮影は禁止されています。
プロ野球中継は高額で販売され球団経営の柱となっています。
そのため上記の撮影は損害賠償請求の対象となる可能性があります。
球団は経営が成り立ってこそ維持できるものです。
利益損失になる行為になっていないか踏みとどまって考えたいですね。
合わせて読んで深く理解しよう
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