【 消えた”最高勝率投手” 】薮田和樹投手の課題は「威力を失ったストレート」と「制球難」

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2017年にはタイトルも獲得し、フル回転の活躍をみせた薮田和樹投手。
今回はストレートに注目しながら2017年との変化に注目して話を進めていきます。

 

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薮田和樹投手の2019年の成績

 

まずは2019年の成績から振り返ってみます。

  • 1軍 4試合 0勝2敗 12回2/3 防御率 9.24
  • 2軍 20試合 6勝8敗 92回2/3 防御率 3.98

 

2017年には最高勝率にも輝いた薮田和樹投手。
しかし、2019年の成績の通り、当時の投球とはかけ離れたものとなっています。

2017年成績 38試合 15勝3敗 129回 防御率 2.58

年々、登板数は減少し、2軍戦でも思ったような成績を残せずにいます。

2019年は初めてのハワイ自主トレを1月中旬まで実施。
帰国後にはブルペンで捕手を座らせて投球するなど復活の意気込みも十分。
しかし、春季キャンプの途中で2軍降格が決まるなど精彩を欠きました。

当時、佐々岡真司投手コーチは以下のようにコメントしています。

「宮崎へ帰します。今のボールでは厳しい。調子、結果というところでもう一回やってもらわないと。対バッターになると、腕が振れない。」

広島・薮田、2軍へ強制送還 佐々岡コーチ「今のボールでは厳しい」/ デイリースポーツ

 

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通用しなくなったストレート

 

2018年になって大きく変化を見せたのがストレートでした。
最高勝率を獲得した年は通用していたストレートが全く通用しない状況に。

2019年に少し持ち直してはいますが、それでもリーグ平均を大きく下回っています。
(※ 本人いわくの「亜大ツーシーム」は「スプリット」と記載)

図1 球種別の成績

 

そのためか、2019年にはストレートを投げる割合は大きく低下しています。
同時にスプリットも大きく減少し、カットボールに依存した形になっています。

ただ、そのカットボールもさほど有効球にはならなったのが2019年の投球でした。
「何を投げても打ち取れない」という感覚が本人にはあったかも知れません。

図2 球種の投球割合

 

変化球に頼る傾向は2018年の春先から顕著にあったようです。
当時の1軍投手コーチの畝龍実コーチのコメントからも読み取れます

「変化球に頼ってばかり。彼のいい直球が投げ込めていない」

広島の薮田が2軍降格へ 昨季の勝率1位、制球難で / 朝日新聞

 

ストレートの年間球速の変化

 

2019年のストレート平均球速と最高球速の変化をみていきます。
例年の状況がわかりませんが、春先に大きく球速を落としています。

シーズン当初は140キロを切ってましたが、後半戦はもりかえしてきました。
とはいえ、それでも平均145キロ前後で全盛期ほどの球速は出ていません。

ピークの2017年と比べると、2019年はおおよそ3キロほど低下しています。
最高球速も150キロを超えることなく、2019年のシーズンを終えました。

図4 ストレートの平均球速と最高球速

 

空振りの取れなくなったストレート

 

ストレートが通用しなくなっているのがわかりました。
実際にストレートの被打率と空振り率をみていくと共に悪化する傾向にあります。
2019年になると被打率は.350近くまで上昇し、空振り率は大きく低下しました。

前述のように球速が落ちれば、当然ながら空振りはとりにくくなります。
特に近年は150キロ投手が増えた影響もあり、打者の目も速球になれています。
145キロ前後のストレートで空振りをとること自体、以前より厳しくなったはず。

また、2017年に比べて2倍近くも長打を打たれることが増えました。
本塁打も4試合に登板して4本打たれ、その大半がストレートを打たれています。

2018年以降は「空振りが取れず、打ち込まれるストレート」
そのストレートを安易に投げ込むわけにもいかず、結果的に変化球に頼る形に。
カットボールに過度にかたよった投球内容になるのも仕方ないかもしれません。

 

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ストライクに集めすぎている可能性も

 

問題点として「制球難」を指摘されやすい薮田投手。
確かに2017年に比べると左右の打者ともに四球を出す確率が上がっています。

ただ、2019年は例年よりもストライクゾーンに集まる傾向にありました。
ストライクゾーンに集まれば、達者もバットに当やすく、空振りも奪いにくい。

また、ボールゾーンに投げた球も振ってもらえなくなり、さらに苦しい投球に。
結果的に威のない球で打ち取れず、四球増加につながったと予想出来ます。

制球難を気にするあまり、腕を振れず、ストライクゾーンに置きに行く投球に。
適当に荒れる本来の投球は消え、逆にゾーンに集めすぎてしまったの知れません。

そうなればストレートの球威が落ちるのも仕方ないことなのかと思います。
もしそうであれば、球威を上げれば解決できるというものでは無さそうです。

首脳陣やファンの声も厳しくなり、制球難を気にし過ぎてるかも知れません。
外れ過ぎない程度に多少バラけるくらいが薮田投手に適しているように思います。
福井優也投手の時もそうでしたが、少し寛容に見守ることも必要かも知れません。

 

2018年から対左打者の対戦成績が悪化

 

2017年と比較すると対左打者に対する成績が大きく変化しています。
被打率、三振率、四球率ともに悪化し、2019年は特に左打者に打ち込まれました。
結果的に2017年に1割5分を下回った被打率が、2019年は3割5分超えまで上昇。

反面、右打者に対しては極端に対戦成績が悪化している訳ではないようです。
もちろん2017年と比較すると悪化してますが、左打者ほど極端ではありません。
そうなると、左打者の結果が成績が悪化している大きな要因だったと言えます

2017年オフに右打者対策を行う必要があったのかというのも疑問でした。
当時、會澤翼選手も指摘はしてましたが、現状の精度をあげるべきだったかと。

結果論にはなってしまいますが、取り組む課題の選択も重要かも知れません。
ステップアップのための施策が返って悪化を招いてしまうことは良くあります。

 

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秋季キャンプからトルネード投法に挑戦

 

制球難を意識してか、秋季キャンプからトルネード気味のフォームに改造中。
おそらく「開きを抑える」という意味で取り組んでいるのだろうと思います。
ただ、それで簡単に制球力が解決するのか?というと微妙な気もしています。

2017年はトルネード投法でなくても良い投球が出来ていたのが理由です。
過去にも何人かの投手が同じように取り組みましたが、成功例はありません。

「開くから最初に閉じる」的な意図はわかるのですが、開く理由があるはず。
それをクリアしない限りは根本的な解決にはつながってこないと思います。

元々、上半身も下半身も上手く使えているかと言えばそうでないタイプ。
どこかに効率性を失うと、少しズレただけで上手くいかない場合が多いです。
例えば、投げ方さえもわからなくなるようなタイプはそれに当たります。

結果的にトルネード投法の取り組みが上手くいくこともあるかも知れません。
何がきっかけになるかかりませんし、現場だからわかることがあると思うので。
個人的には開く問題は別にあると思いますが、ひとまず結果を見届けましょう。

 

佐々岡真司監督の新体制を機に復活を

 

佐々岡監督はキャンプ中に以下のように話していました。

「岡田、薮田を復活させないと安定した戦いはできない。」

広島薮田、復活へ秋季練習は初日からブルペン入る / 日刊スポーツ

チームの体制も変わり、評価は白紙に戻して横一線からスタート
ここでまた信頼を失えば、もう先発のチャンスはないかもしれません。

2020年も先発候補のルーキーが入団しました。
薮田投手よりも若い投手は年々増え、優遇される立場ではなくなりました。

結果の出ない中堅よりも、まだ希望のある若手を使いたいのは誰でも同じ。
キャンプ、オープン戦と結果を出し続けなければ厳しい立場になりました。

2019年オフに本人が不振の理由を聞かれてこう答えていました。
理由がわからないと解決策もなく、どう取り組めばよいかわかりません
少なくとも「理由はわかってても出来ない」ところにたどり着いて欲しい所です。

「それは分からない。それが分かったときにはもう1回勝てていると思います。」

広島・薮田和樹 下半身主導で3年前の感覚を/来季の復活を誓う / 週刊ベースボールONLINE

 

今回のまとめ

 

今回は薮田和樹投手の投球について話を進めてきました。
この2年間、不本意な投球が続き、1軍の戦力になれていないのが現状です。

2017年には最高勝率のタイトルを獲得し、侍JAPANにも選出されました。
しかし、当時のような投球は影を潜め、1・2軍を行き来しています。

本人も意識している通り、ストレートの劣化が目立ちます。
球威を失い、空振りを取ることもだんだん難しくなってきています。
現状打破に色々と工夫をしている様子ですが、思ったような結果は出ず。
本人が1番苦しい時期だと思いますが、なんとか乗り越えて頂ければと。

新体制となり薮田投手にとってもチャンスの2020年。
この2年間を払しょくする活躍ができることを期待しています。

 

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