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毎年のように100名前後のプロ野球選手が引退しています。
今回は引退後に大事になる年金制度と転職サポートについて解説していきます。
尚、プロ野球選手のセカンドキャリアのまとめ記事は以下になります。
【 プロ野球選手のセカンドキャリア 】退団後の進路希望と進路調査からみえる現実
この記事には広告が含まれます どんなプロ野球選手もいつか引退する時が訪れます。今回は引退後の異色なセカンドキャリアについて解説していきます。※ グラフはNPB「セカンドキャリア」から集計&n...
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引退後の1番の不安は「収入」
プロ野球ではフェニックスリーグ開催時にセカンドキャリアについて調査を行っています。
その中で「引退後の不安」についての質問があり、以下のような結果となっています。
やはり収入面での不安が最も多く、ついでの不安は進路となっています。
このように引退後の経済的な不安を抱えている現役選手が多いのが現状です。
進路そのものが収入に関わるので同じ要素ではあります。
これらをいかに解消できるかが引退後の人生のポイントとなっています。
2019年アンケートの「引退後に不安な要素」
- 収入(生活していけるのか?) 76.0% (79名)
- 進路(引退後、何をやっていけば良いか?) 73.1% (76名)
- やりがい喪失 16.3% (17名)
- 世間体(親戚や友人などの反応) 1.9% (2名)
- 回答なし 2.9% (3名)
2011年に廃止した日本プロ野球の「年金制度」
以下がプロ野球の年金制度の概要になります。
- 1964年に導入
- 日本プロ野球機構が対象
- 監督・コーチ・選手・審判が対象
年金の受給条件は以下の通りです。
- 1・2軍合計で10年間以上選手登録されたもの
- 選手が掛け金として負担
- 引退後、55歳から年間120万円を支給
しかし、2011年に財源不足を理由に廃止することが決定しました。
解散時に52億円の赤字を抱え、さらに年間9億円を払い続けることが不可能に。
当時の選手会会長の新井貴浩選手(当時阪神タイガース)のもと廃止が決定。
積立金を解散資金に分配する形でプロ野球OBを中心に返金するに至っています。
① MLBの年金制度
MLBでは年金制度は続いており、日本と比べてかなり好待遇です。
- 最低43日のメジャー登録で受給可能
- 10年間メジャー在籍で満額の年間21万ドル(約2300万円)
- 球団が全額を負担
- 受給開始は45、50、55、62歳のいずれか(終身年金)
ちなみに日本人メジャーリーガーで満額を達成したのは以下の選手。
過去63人の日本人メジャーリーガーが誕生しましたが僅か4人でした。
10年以上在籍のメジャーリーガー
在籍期間 | 在籍年数 | |
---|---|---|
野茂英雄 | 1995~2008年 | 12年 |
松井秀喜 | 2002~2012年 | 10年 |
大家友和 | 1999~2009年 | 10年 |
イチロー | 2001~2019年 | 19年 |
ダルビッシュ有 | 2012~ | 13年 (2024年時点) |
※ 上原浩治投手・長谷川滋利投手・田澤純一投手が9年
② NPBとMLBの年金制度の比較
簡単にNPBとMLBの年金制度を比較すると以下の通りです。
こうしてみると制度としてかなりの差があることがわかります。
日米プロ野球の年金制度の比較
日本プロ野球 | MLB | |
---|---|---|
条件 | 1・2軍合計で10年間在籍 | 最低43日のメジャー登録 |
受給年齢 | 55歳 | 45、50、55、62歳 |
年額 | 約120万円 | 10年満額で約2300万円 |
負担 | NPBと選手 (掛け金) | 球団 (放映権などの収益) |
現状 | 2011年廃止 | 運用中 |
とはいえ、すでにNPBの年金制度は廃止されました。
廃止された時点で比較することもできなくなってしまいました。
③ 日本相撲協会は「厚生年金」に加入
相撲取りをはじめ日本相撲協会の協会員は職員としての所属です。
つまり、会社員としての扱いとなるので厚生年金の加入対象となります。
仮に引退して自営業になったとしても、払った期間は年金に加算されます。
若くして入門した場合、10年分の厚生年金があることも珍しくないでしょう。
プロ野球と相撲を比較すると以下の通りです。
こうしてみると日本相撲協会のバックアップはしっかりしています。
プロ野球選手と相撲協会の年金制度
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年金制度廃止に伴う補助的な制度
年金制度廃止に伴って以下のような制度も設けられました。
しかし、年金に比べて満足な制度とは言えないのが現状です。
① 引退後のために必要な「退団金共済制度」
年金制度は廃止となったものの、選手会が行う「退団金共済制度」があります。
任意での加入にはなりますが、一口10万円で年間50口まで積み立て可能な制度です。
- 支給額 = ( 10万円 × 口数 )×支払い年数
1年目から積み立てることができ、引退後の必要経費にあてることができます。
短期であれば積立額は少額ですが、年俸の多いベテラン選手などはかなりの額に。
こうした制度があることで、急に解雇になっても翌年の税金に対応できます。
もちろんそれまでしっかり納めてきている選手であればの話にはなってきます。
仕事が無くなって、それまで貰っていた45%の税金を払うとなると大変です。
そういった面でも現役時代からしっかりと引退後を考えておく必要があります。
毎年1月には新人選手を対象とした説明会が開催されています。
選手会の運営する退団金共済制度(引退に向けて毎月お金を積み立てる制度)の説明中🧑🏻🏫
新人選手のみなさんも真剣に聞いてくれています✨ pic.twitter.com/ftDqQS9RU8— 日本プロ野球選手会 (@JPBPA_Press) January 10, 2020
② 2016年に追加された「支配下10年以上選手養老補助制度」
2016年からNPBでは「養老補助制度」が追加されました。
その制度を受けられる選手の条件と支給額は以下の通りです。
- 支配下登録10年以上の元選手
- 55歳と60歳の時に各50万円ずつ支給
ただし、年金制度廃止時に一時金を受給している場合は対象外となっています。
年金制度が無くなった以降に所属した選手のためにできた制度と言っても良いでしょう。
とはいえ、年金制度でもらえた額と比べるとずいぶん少ない額です。
また、毎年の支給ではなく2度の支給のみ、年金に比べて“僅かな足し”程度です。
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選手会が支援するプロ野球引退後のキャリアサポート
プロ野球選手会により引退後の選手に対して3つのサポートがあります。
近年ではこうした形で選手会が積極的にセカンドキャリアをバックアップしています。
① 元プロ野球選手を対象とした「イーキャリアNEXTFIELD」
ソフトバンクグループとして1999年に設立した「ソフトバンクヒューマンキャピタル」。
そのヒューマンキャピタルは2014年からは「イーキャリアNEXTFIELD」を運営しています。
プロ野球引退後の再就職サポートを目的とし、いつでも求人情報を検索できます。
ただし、対象者の制限が定められているため引退して時間が経った場合は利用できません。
【 対象 】 引退から5年以内かつ引退後の退職が2回以内の元プロ野球選手
同サイトでは実際に転職後に活躍している元プロ野球選手のインタビュー記事もあります。
多くの先輩選手たちが各分野で活躍しているので引退した選手にとって安心できる環境です。
〒106-0032
東京都港区六本木2-4-5 六本木Dスクエア3F
電話 03-5549-1288 (平日 9:00~17:45)
代表取締役社長兼CEO 木崎 秀夫
設立 1999年9月30日
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② 國學院大學「セカンドキャリア特別選考入学試験」と協定締結
2017年11月にはNPB選手会と國學院大學が「セカンドキャリア特別選考入試」の協定を結びました。
中学・高校の保健体育教員免許や小学校の教員免許が取得でき、選手のキャリアも十分に生かせます。
- 学部学科 人間開発学部 健康体育学科
- 受験資格 日本プロ野球選手会が推薦する元日本プロ野球選手会所属選手
- 選考方法 作文、面接
- 合格枠 3名
- 合格枠 入学金と授業料を4年間免除
- 試験要綱 PDF資料
2018年オフには元ソフトバンクの育成選手だった幸山一大氏(22)が初の合格者となりました。
いくつか記事を読ませて頂きましたが、誠実そうな芯のしっかり方で今後の活躍期待しています。
本日、現役選手向け雑誌の引退した選手へのインタビュー企画で元ソフトバンクホークスの幸山一大さんの元を訪れました🌻
現在、選手会のセカンドキャリア支援制度を利用して、國學院大学で教員免許取得のため日々勉強されています👊
毎日充実した日々を送っておられ、とても楽しい話が聞けました😊 pic.twitter.com/LQq2dzf5cl— 日本プロ野球選手会 (@JPBPA_Press) July 10, 2019
翌年の2019年オフには元カープの岡林飛翔氏(20)、元ロッテの島孝明氏(21)の2名が無事に合格。
現在、この3名が國學院大學に在籍し、教員免許や野球指導者を目指して学生として頑張っています。
【 プロ野球選手から教師へ 】大学進学で高校野球の監督・コーチで甲子園を目指す選手たち
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③ 新潟産業大学「ネットの大学 managara」と協定締結
さらに2020年オフには新潟産業大学の「ネット大学managara」と協定を結びました。
こちらの制度は通信教育課程のため、仕事をしながらでも学習することが可能となっています。
また、入学初年度の学費も35万円と国立大学よりも少ない金額で入学しやすくなっています。
ただし、通信教育なのでひとりでも継続的に学習が続けていける選手でないと厳しいでしょう。
- 学部学科 経済学部 経済経営学科 通信教育課程
- 受験資格 日本プロ野球選手会が推薦する元日本プロ野球選手会所属選手
- 合格枠 2名(2021年度入学者)
- 合格枠 年間授業料免除
【プレスリリース】日本プロ野球選手会 @JPBPA_Press と 「プロ野球選手のセカンドキャリアに係る特待生制度」に関する協定を締結しました。https://t.co/rot6qYV9Uk
𖤣 —————————————————#ネットの大学 #managara #マナガラ#ながら学び #学び方改革
————————————————— 𖥣𖤣— 【公式】ネットの大学® managara (@managara_net) January 13, 2021
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支援として不十分なJリーグのキャリアサポート
Jリーグにはかつて直営のキャリアサポート体制がありました。
しかし、現在は解散して、民間企業として事業が引き継がれています。
① 10年で頓挫したJリーグの「キャリアサポートセンター」
Jリーグでは2002年に引退後の選手のために「キャリアサポートセンター」を設立しました。
現役選手のキャリア支援、引退選手への企業紹介や進路相談にのるなどの活動を行っていました。
主なサポート内容
- 企業やサッカースクールなどで「インターンシップの実施」
- JリーグのOB選手や他競技のOB選手との「キャリア交流会」
- チームとの契約が終了した選手に対する「就学サポート」
- 年1~2回のキャリアサポートマガジン「Off the Pitchの発行」
しかし、2011年よりJリーグからの予算が削減され、サポート内容は縮小。
年金制度や退職金制度の話も出る中で、設立10年でサポート事業は頓挫し解散しています。
② 事業を引き継いだ「アスリートキャリアパートナー」
キャリアサポートセンターの業務を引き継ぐ形になったのが「株式会社山愛」。
同社の事業として2014年に「アスリートキャリアパートナー」を立ち上げています。
キャリアサポートセンターのスタッフが立ち上げた事業を取り込む形でスタート。
登録アスリートは850人を超え、Jリーガーを含む多くの選手の再就職を支援しています。
相談や紹介に関する費用は企業側が負担する形になっています。
就職体験のない選手に対してもしっかりとサポートしておられるようです。
【 野球部・体育会系の就職/転職 】充実するアスリートのセカンドキャリアの支援
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競技団体以外も積極的にセカンドキャリアをサポート
最近は競技団体や関係団体以外でもアスリートの転職支援が増えてきています。
特定の競技に絞らず広く受け入れることで様々な競技の選手が利用することが可能です。
① 2つのキャリアを推進する「アスリートデュアルキャリア推進機構」
2014年には「アスリートデュアルキャリア推進機構」が設立されています。
代表理事をつとめるのは元阪神タイガースの投手で、現在は公認会計士の奥村武博氏。
デュアルキャリアとは「人として」と「アスリートとして」のキャリアを両立するというものです。
つまり、アスリートも競技以外のキャリアも競技と平行して経験することの重要性を推進しています。
また、シェアハウスを運営する株式会社DADAと提携することで引退後の住居支援も行っています。
競技引退後に新たなキャリアをスタートの際に、少しでも負担を少なくすることを目的としています。
〒102-0074
東京都千代田区九段南2-7-6 マニュライフプレイス九段南3F
03-5214-6173
代表理事 奥村武博(公認会計士・元阪神タイガース投手)
設立 2017年10月19日
② 社会人として「一般社団法人 日本営業大学」を選ぶ選手も
また、学校とは異なりますが一般社団法人日本営業大学に通う選手もいます。
アスリートが引退後に一般社会にでるための準備として様々なスキルを学んでいます。
一般社団法人日本営業大学に進学した選手
選手名 | 年齢 | 進路 | |
---|---|---|---|
2019 オフ |
森山恵佑 | 25 | 日本ハムチーム管理部 (2021) 日本ハム一軍サブマネジャー (2022-) |
2019 オフ |
森本龍弥 | 25 |
日本営業大学は橋爪大佑選手(2015年引退)と水野滉也投手(2019年起業)も参加しています。
アスリート専門だからこそのサポート体制
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今回のまとめ
今回はプロ野球引退後の年金制度と転職支援について話を進めてきました。
プロ野球選手はあくまで個人事業主であり、引退後に様々な対応に迫られます。
年金、転職など選手時代にはあまり考えなかったこともあるかと思います。
もちろん最近では本田圭佑選手のように選手兼で起業している選手もいます。
ただ、プロ野球選手の場合は多くは野球に専念していることが多いです。
現役中に引退後のことを考えるのは野球に集中していないと考えるかも知れません。
しかし、選手生活も大半の選手が20代後半までの厳しい世界。
現役中からオフの間だけでも少しだけ動いておくことが必要かも知れません。
長くはない現役生活を終えた後に訪れる長い第二の人生。
大変なことは多いかも知れませんが引退後の活躍も応援しています。
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