2019年は打線が3連覇の時のように上手く機能しなかったカープ。
今回はチーム本塁打数とチーム成績に着目しながらチームの課題に触れていきます。
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2000年以降のセ・リーグ各球団の本塁打数
2000年以降のセ・リーグ各球団の本塁打数をグラフ化しました。
2011年にリーグ全体で激減しているのは統一球の影響と思われます。
ボールが修正された2013年からは再び本塁打数は増加傾向にあります。
予想通り、巨人は毎年のようにリーグ上位を占めています。
特に2004年には250本を超え、近年で考えると異常な本数を記録しました。
反対に、中日は多くの年でリーグ下位の本塁打数を記録。
1997年にナゴヤドームが出来て以来、本塁打数が明らかに減りました。
早ければ2021年にテラス席設置の話も出ており、改善も見込まれています。
図1 2000年以降のセ・リーグ各球団の本塁打数
カープの本塁打数の推移と成績
カープを見ていくと、比較的リーグ内での上下が激しい傾向です。
特に2009年から2011年あたりはリーグ最下位の本塁打数に低迷。
2009年から球場が広島市民球場からマツダスタジアムへの移行。
また、栗原健太選手のケガや打撃不振、外国人打者の不発など。
様々な要因が重なり、チームの深刻な長打力不足が際立っていました。
反対に赤い丸で示したAクラス入りの年はリーグ上位の本塁打数を記録。
2013~2014年の3位、2016~2018年の優勝と共に1~2位に位置します。
そして、Bクラスになった2019年には一気に下降傾向を示しています。
少なくとも近年のカープが強い年はリーグ屈指の長打力を誇ってきました。
図2 カープの本塁打数の推移と成績
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① 2000年以降のカープ打者の本塁打数トップ3
続いて、2000年以降のカープ打者の本塁打数トップ3をグラフ化しました。
パッと目につくのは、丸佳浩選手がトップ3に安定して入り続けていること。
また、鈴木誠也選手が2016年以降は平均的に25本塁打以上を記録しています。
カープ低迷期の2013年くらいまでは20本塁打に達する打者がいません。
2012年はチームトップでも堂林翔太選手の14本塁打と異常に少ない本数でした。
2013年も同様に、丸佳浩選手とネイト・シアーホルツ選手が14本でトップ。
また、トップ3に入る顔ぶれも異なり中軸打者が不足したことがわかります。
栗原健太選手も打撃不振に陥り、カープにとって厳しい時期だったことを覚えています。
やはり3連覇した時期は安定して20本以上打てる打者が存在しました。
丸佳浩選手、鈴木誠也選手、ブラッド・エルドレッド選手、サビエル・バティスタ選手。
打線の主軸となる選手たちがレギュラーとして存在していることがよくわかります。
図3 2010年以降のチーム本塁打数トップ3
② 2020年は本塁打数が減少する可能性も
2018~2019年に25本塁打以上を記録したサビエル・バティスタ選手の契約はいまだ未定。
もしこのまま契約しないままだと、年間25本塁打クラスの打者を欠くことになります。
[ バティスタ選手の通算成績 ]
- 2018年 打率 .242 25本 55打点
- 2019年 打率 .269 26本 64打点
そのバティスタ選手の現状ですが、ウィンターリーグ参加まではわかっています。
しかし、そのウインターリーグでも打率.139、0本塁打と精彩を欠きました。
本人のモチベーションの問題もありますが、本来の姿とはほど遠い状況です。
近々のコメントが無いため本人の意向についても現状はわかりません。
ドミニカに帰国しているので話し合いなど球団との接触も限定されています。
すでに本人のモチベーションも下がっていれば契約も無いかも知れません。
いずれにせよ、25本塁打レベルの打者が抜けることも視野にいれる必要があります。
新外国人のホセ・ピレラ選手も加わりますが、日本での実績は無く計算は立ちません。
もしホセ・ピレラ選手が不発の場合、アレハンドロ・メヒア選手頼みになります。
しかし、そのアレハンドロ・メヒア選手も2019年後半に数試合スタメン出場した程度。
サビエル・バティスタ選手が抜けた場合は実績のない選手でやり繰りする状況になります。
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数年後の鈴木誠也選手の「MLBポスティング移籍」
あと数年で鈴木誠也選手のMLB移籍がほぼぼ確実と言われています。
MLB移籍の意思も報道されており、その可能性はかなり高くなっています。
ケガの影響で低下していた外野守備も2019年は復活しつつあります。
また、走塁面でも自己ベストの25盗塁を記録し、トリプルスリーの期待もかかります。
そうなれば当然ながらMLB球団も放っておくことも無いはずです。
いずれにせよ、ポスティングでのMLB移籍は避けられない状況です。
① 近く起きる「長距離砲不在の問題」
MLB移籍となった時に起きるのが長距離砲不在の問題。
特にカープは右打者の育成が上手くいっておらず、次期レギュラー候補は左ばかり。
“和製大砲”と言える存在はおらず、良くて23本前後のタイプが揃っています。
2019年新人の林晃汰選手は次期”大砲候補”として期待されています。
しかし、個人的には現時点を見る限り、中距離打者タイプとみています。
詳細は伏せておきますが、特定のコースに対して不利な対応をしています。
引退した岩本貴裕選手がそうだったように、長距離砲としては克服したいところです。
ざっくり言うと、今の対応だと「打球が上がりにくい」という印象です。
少しさかのぼると、”前田智徳2世”と期待された末永真史選手もそうでした。
良い打者ほどこの問題点を上手く対応し、長く活躍していることが多いです。
ただ、まだ1年目であり改善する可能性があるため、変化することを期待します。
※ 著作権・肖像権に配慮し、動画や連続写真による動作分析は省略します
② 将来の「右の長距離砲候補」が欠乏状態
改めて、右打者の話に戻して、長距離砲不足について触れていきます。
2軍の右打者をみてもある程度の長打があるのは中村奨成選手と正随優弥選手くらい。
中村奨成選手に関しては甲子園の活躍が過度な評価になったのは事実だと思います。
実際、甲子園で活躍するまでは広島県内でもそこまで高い評価ではありませんでした。
高校時代から打撃面での課題があり、プロに入っても苦労すると予測はできました。
打球特性も踏まえてみても、本来の打者タイプとしては中距離タイプだと思います。
正随優弥選手はプロ1年目を見る限り、1軍のレギュラー獲得はかなり厳しいかなと。
2軍戦中継を20試合以上みましたが、明らかにスイングメカニズムに課題を抱えています。
例えば、中村亘佑選手や多田大輔選手や美間優槻選手なども同じタイプになります。
美間優槻選手が2軍では3割を打てても、1軍では活躍できない理由はそこにありました。
もちろん当たれば飛ばせるというのも事実です。
ただ、試合はフリーバッティングではないのでそこに対応できないと意味がありません。
その他を見ても、プロ野球で長距離砲として生きていける選手は見当たりません。
少なくとも2軍で15本くらいは打てる右打者が出てきて欲しいところです。
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③ カープ2軍の日本人最多本塁打
以下、2015年以降の2軍の日本人最多本塁打数をピックアップします。
見てわかる通り、10本塁打がなんとかギリギリ打てているという状況。
そして2015年の下水流昂選手と2018年の美間優槻選手はすでにチームにはいません。
林晃汰選手の可能性は残っていますが、個人的には前述した通りとみています。
[ 2軍の日本人最多本塁打数 ]
- 2015年 下水流昂 14本
- 2016年 野間峻祥 7本
- 2017年 美間優規 10本
- 2018年 高橋大樹 10本
- 2019年 林晃汰 7本
④ 球団サイドも長距離砲不在に危機感を
球団も低迷期のように外国人頼みの長打力になる危機感を持つ必要があります。
数年後の鈴木誠也選手の移籍を考えると、急務の課題として考えないといけません。
チーム方針として強振する打者を好まないのも事実でもあります。
足の速い選手に対して、固定概念的に長打を打たせない指導も目立ちます。
安部友裕選手もそうですが、現状より本塁打数を打てる能力はあると思います。
もちろん、上本崇司選手や曽根海成選手や羽月隆太郎選手にまではさすがに求めません。
しかし、長打を打てる能力があるのにそれを上手くいかせないのも勿体ないですね。
2020年から1軍と2軍の打撃コーチが入れ替わります。
それぞれのコーチがそれぞれの持ち場でどう打線を作るか見どころです。
“選手が勝手に機能してくれる”という打線は2018年までの話。
数年後に起こる長打力の低下に備え、長距離砲育成は不可欠なのは事実です。
ドラフト指名も足のある選手に偏り、打撃優先タイプの指名は少ないです。
どうしても似たような選手が偏り、バリエーションの少ない状況となっていきます。
多少、守備力や走力が落ちたとしても長打を打てる選手を積極的に補強すべき。
2007年の松山竜平選手から2019年の林晃汰選手までそういった選手は見ませんでした。
小柄で長打の少ない内野手が偏り、個性に差のない選手が揃ってもいます。
誰かが育たない時の補填では無く、バリエーションのあるドラフト指名も必要です。
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今回のまとめ
今回はチーム本塁打数とチーム成績について話を進めてきました。
カープが強い時期はチーム本塁打数がリーグ上位を記録しています。
また、安定して20本塁打以上打てる日本人打者が複数名在籍していました。
近年の野球は打撃面で優れたチームが優勝する確率が高い傾向です。
少ない点数で投手陣で逃げ切るという野球のスタイルでは無くなりました。
3連覇したカープもそうだったように打線がチームを牽引します。
主力選手の移籍が続くカープにとって次世代の主軸打者の育成は急務です。
そこをどうして埋めていくかはチームの大きな課題になりました。
そう簡単に長距離砲が育たないのも事実ですが、何もしないと始まりません。
「ドラフト戦略」と「育成」と両輪での対策が課題解決には不可欠となります。
数年後には長距離砲の欠乏状態がおそらく訪れると思います。
そうなった時に損失を補う選手がひとりでも多く現れることを期待します。
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