【 2019年カープリリーフ陣の「球数」を検証 】菊池保則投手と阪神リリーフ陣のタフネスさ

JEY(ジェイ)

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障害予防や投手交代など様々な場面で注目を浴びる「球数」。
今回はリリーフ投手の球数についてトレードも絡めて話を進めていきます。

 

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「1イニングでの球数」を検証

 

グラフは2019年の主なリリーフ陣の「1イニングの球数平均」になります。

平均で見た場合、1イニングで最も球数を多く投げているのは中﨑翔太手。
そして、新戦力となった島内颯太郎投手、遠藤淳志投手がそれに続いています。

逆に最も少ないのがこちらも新戦力となった菊池保則投手、中村恭平投手。
その他、外国人投手と実績組のベテラン投手がその中間に位置しています。

図1 1イニングに対する球数
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① 平均球数の「オールスター前後での比較」

 

次に、先ほどの投手の球数をオールスター前後で比較しました。
後半戦に入って顕著に球数が増加している投手は以下の4名でした。

  • 遠藤淳志投手
  • カイル・レグナルト投手
  • 中村恭平投手
  • 一岡竜司投手

 

ただ、一岡竜司投手は後半戦は1イニングのみなので除外とします。
他の3投手は前半戦でフル回転の活躍が目立った投手たちです。
しかし、夏場を迎えた頃から少しずつバテてきた姿も見られました。

逆に後半戦に入って球数を減らしているのが菊池保則投手
本人も「夏が得意」と言うだけあって、暑い時期でもバテ知らず。
夏本番を迎えても調子を崩すことなく、フルシーズンを投げ切りました。

図2 シーズン前半戦と後半戦の球数比較
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② 平均球数が増減した投手の「月別の平均値」

 

次に先ほどピックアップした4投手の月別の平均値で比較します。
遠藤淳志投手とカイル・レグナルト投手は後半戦に入って顕著に球数が増えました

逆に、菊池保則投手は7月以降からイニング球数を減らすことに成功しています。
夏のしんどい時期に、少ない球数で済むのは体力面で大きなプラスです。
フルシーズン離脱することなく投げ切った理由の1つはこの辺にもあります。

図3 月別のイニング球数の比較
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菊池保則投手の球数が少ない理由

 

ここからは菊池保則投手の球数が少ない理由について考えていきます。
その理由として注目したのは「被打率」と「被出塁」の2つの項目です。

① カギとなった「被打率」と「被出塁率」

 

セ・リーグで30イニング以上投げたリリーフ投手をピックアップ。
そこから、”被打率”を割り出してみると、菊池保則投手はリーグ4位に位置

[ 30イニング登板投手の被打率 ]

被打率 試合数
1. 岩崎優 (阪神) .131 48試合
2. 藤川球児 (阪神) .153 56試合
3. ピアース・ジョンソン (阪神) .165 58試合
4. 菊池保則 (広島) .188 58試合
5. ラファエル・ドリス (阪神) .190 56試合

鉄壁の阪神リリーフ陣の中に割って入った菊池保則投手。
いかに安打を打たれずに球数を抑えられていたかがよくわかります
こうしたことの積み重ねで夏場も離脱せずフルシーズン投げ抜けた。

投手が打者に安打を打たれる割合

 

同様に、30イニング以上投げた投手の”被出塁率”を割り出しました。
やはり阪神リリーフ陣が上位を占める中で菊池保則投手は5位に位置

[ 30イニング登板投手の被出塁率 ]

被出塁率 試合数
1. 岩崎優 (阪神) .217 48試合
2. ピアース・ジョンソン (阪神) .217 58試合
3. ラファエル・ドリス (阪神) .238 56試合
4. 島本浩也 (阪神) .267 63試合
5. 菊池保則 (広島) .268 67試合
5. 守屋功輝 (阪神) .268 57試合

被打率の低さだけでなく、四球などでも塁に出す機会も少ない菊池保則投手。
このようにランナーを塁に出さないことで、 少ない球数を維持できています。
四球で崩れることなく低めに集めて打ち取る、効率的な投球術が光りました。

投手が打者を塁に出す割合

 

② 三振は派手だが「どうアウトを取るか」が大事

 

野球の魅力のひとつに「奪三振」があります。
「〇〇奪三振で新記録!」など華やかさの象徴としてよく取り上げています。
奪三振の多い投手は見ててもカッコ良いし、期待感やワクワク感が強いです。

ただ、冷静に考えれば、三振もゴロアウトもひとつのアウトに過ぎません
極論で言えば、1球で全打席抑えられれば、27球で完封して終わることができます。

逆に三振が多い場合は、追い込むまでに球数を要し、身体的負担はかかります
たまの1試合なら良いですが、これが毎試合だと積み重ねの負担は大きくなります。

フルシーズンを離脱せずに戦うためのにはそれだけ体力も必要です。
小さな負担であっても、積み重なっていけば「塵も積もれば」になってきます

仮にA投手とB投手で1試合5球違ったとして、50試合に投げれば250球。
それが5年続けば1250球、10年続けば2500球と積み重ねが大きな差になります。

 

③ 肩やヒジのケガの多くは「積み重ねによる負担」

 

プロレベルだと1球を投げるための肩やヒジへのストレスは小さくありません。
野球の場合、各関節に対する小さなストレスの積み重ねによる故障が多い傾向です。

つまり、球数が多いということはそれだけ関節に対して負担をかけています。
そう考えていくと、三振で派手にアウトを取ることが全てではありません。

“ひねくれた言い方”をすれば、わざわざストレスをかけているとも言えます。
投手の役割は「勝ちに繋げること」と考えれば、三振である必要ではありません

ランナーを出さず、少ない球数でアウトを取れれば、それだけ長く投げられます。
27球で完封は極端な話ですが、極論で言えばそれが一番良い方法と言えます。

1軍で派手に三振を奪っていた投手がヒジを壊して2~3年で終わり。
それよりも地味でも長くチームに貢献出来る方が投手として良いのは明らかです。

そういった投手は離脱も少ないため、チームの戦力ダウンのリスクは低くなります。
そうなればチーム成績が安定することで、戦力補強の面でも余裕が生まれます。
「離脱者の穴埋め」に追われるドラフトやFA補強もあまり必要がなくなります

ヤクルトのように毎年毎年離脱が続くと、いくら補強しても追い付きません。
ソフトバンクの厚い選手層があれば話は別ですが、全てのチームがそうはいきません。

そう考えると、強さや派手さも必要ですが、そうでない投手も評価するべきです。
地味だけど、少ない球数で丁寧にアウトを積み重ねていく投球スタイルも大事

阪神のリリーフ陣みると、ほとんどの投手が球数がリーグ平均を下回っています。
「わずか数球」の積み重ねが鉄壁リリーフ陣を維持できる理由の1つにもなります。

 

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過去10年間のトレード実績

 

過去10年のカープがトレードで獲得してきた選手は以下の通り。
正直な感想として、戦力にならず“空振り”に終わってきたのが現実です

[ 過去10年間のトレード実績 ]

加入選手 放出選手
2010年5月 迎祐一郎+金銭 長谷川昌幸喜田剛
2010年11月 菊地原毅 小島心二郎
2012年12月 江草仁貴 嶋重宜
2013年4月 小野淳平 青木高広
2018年7月 曽根海成 美間優規
2018年11月 菊池保則 福井優也
2019年7月 三好匠 下水流昂

 

① トレード成功例となった菊池保則投手

 

不発だったトレードでしたが、菊池保則投手が過去10年で初の成功例となりました。
移籍1年目の2019年は58試合に登板し、楽天9年間で登板した69試合に迫る勢いでした。
本人にとってもカープにとっても良いトレードとなったことは間違いないでしょう。

[ トレード前後の投手成績 ]

投手成績
2010~2018年 (楽天) 69試合 12勝15敗 270回 4.23
2019年 (カープ) 58試合   1勝  3敗   61回 2.80

 

② ソフトバンクに移籍した美間優槻選手は戦力外に

 

ソフトバンクに移籍した美間優規選手は2019年オフに戦力外となりました。
2018年7月に移籍して、1年3ヵ月と短いソフトバンクでの選手生活でした。
コメントではトライアウトは受けず、このまま現役を引退する意向とのことです。

[ 2019年の打撃成績 ]

打撃成績
2019年 1軍成績 15試合   22打数  2安打 1本塁打   1打点 .091
2019年 2軍成績 83試合 250打数69安打 4本塁打 29打点 .276

 

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今回のまとめ

 

今回はリリーフ陣の球数に注目して話を進めてきました。
カープの中では菊池保則投手のコスパの良い投球内容が目立ちます。
逆に中﨑翔太投手の不振がシーズン成績に響いたとも言えます。

そして、鉄壁の阪神リリーフ陣はさすがのひとこと。
戦力の循環が上手く出来ており、12球団屈指のリリーフ陣と言えます。

菊池保則投手のトレードはカープにとって大きなプラスとなりました。
正直、ここまでフル回転してくれると予想してなかった人も多いでしょう。
本人にとっても環境が変わることで飛躍するきっかけとなりました。

プロ入り初めてシーズンフル回転の活躍をみせた菊池保則投手。
2020年も地味ながらも縁の下の力持ち的な活躍を期待しています。

 

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