今回は野球界のセオリーにスポットを当てたいと思います。
過去のデータを振り返り、主力選手を中心にその傾向を見ていきます。
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「対右投手」と「対左投手」のセオリーを調査
まずは「対右投手」と「対左投手」の打撃成績を振り返ります。
ここではセオリー通りなのか、異なるのかをデータから検証していきます。
① 主力選手の「対右投手」の打撃成績
2018年に250打席以上立った選手をピックアップします。
右打者をブラック、左打者をレッドの文字で表示しました。
打席 | 打率 | 本塁打 | |
---|---|---|---|
鈴木誠也 | 右 | .318 | 20 |
西川龍馬 | 左 | .310 | 5 |
松山竜平 | 左 | .309 | 10 |
野間峻祥 | 左 | .304 | 4 |
會澤翼 | 右 | .298 | 7 |
丸佳浩 | 左 | .291 | 23 |
田中広輔 | 左 | .261 | 5 |
安部友裕 | 左 | .243 | 3 |
菊池涼介 | 右 | .212 | 5 |
サビエル・バティスタ | 右 | .209 | 11 |
対右投手なので「左打者が有利、右打者が苦手」とされる場面。
セオリー通りでいけば左打者が上位に並ぶようになるはずです。
見ての通り、西川龍馬選手、松山竜平選手、野間峻祥選手と左打者が上位に並びました。
反面、安部友裕選手や田中広輔選手のようにさほど得意とも言えない選手もいます。
菊池涼介選手とサビエル・バティスタ選手はセオリー通りに「右投手が苦手」となりました。
鈴木誠也選手は右打者ですが、さすがのセオリーを無視した好成績でした。
② 主力選手の「対左投手」の打撃成績
次に対右投手と同様に、対左投手をみていきます。
右打者をブラック、左打者をブルーの文字で表示しました。
打席 | 打率 | 本塁打 | |
---|---|---|---|
丸佳浩 | 左 | .326 | 16 |
鈴木誠也 | 右 | .324 | 10 |
會澤翼 | 右 | .315 | 6 |
西川龍馬 | 左 | .307 | 1 |
サビエル・バティスタ | 右 | .291 | 14 |
松山竜平 | 左 | .286 | 2 |
菊池涼介 | 右 | .271 | 8 |
田中広輔 | 左 | .265 | 5 |
野間峻祥 | 左 | .254 | 1 |
安部友裕 | 左 | .221 | 1 |
対左投手なので「右打者が有利、左打者が苦手」とされる場面。
セオリー通りでいけば右打者が上位に並ぶようになるはずです。
見ての通り、鈴木誠也、會澤翼、バティスタ選手と右打者が上位に並びました。
こちらはセオリー通り、左投手を苦手とする右打者はいないようです。
左打者の田中広輔、野間峻祥、安部友裕選手はセオリー通り左投手を苦手としました。
ただ、西川龍馬選手に関しては左打者ながら、対左投手も苦にしていません。
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③ 打者別でみた「対右投手・対左投手」の打撃成績
次に各打者の対右・対左投手の打撃成績を比較します。
まずは左打者からをみていきます。
丸佳浩選手はセオリーに反して、左投手をかなり得意としています。
田中広輔選手も僅かですが、左投手の方が右投手よりも打率が上回っていた。
松山竜平、野間峻祥、安部友裕選手はセオリー通り、右投手を得意としました。
次に右打者をみていきます。
全ての右打者が右投手よりも左投手を得意としていました。
特に、菊池涼介選手とサビエル・バティスタ選手はそれが顕著に表れました。
反面、2人とも右投手をかなり苦手としていた側面もあります。
左右ともにほぼ差がなく打っている選手もいます。
鈴木誠也選手、西川龍馬選手は2人とも.300を超えていました。
左右の投手に関係なく成績を残せる優秀な打者であることが示されました。
丸佳浩選手、會澤翼選手、松山竜平選手もほぼ左右均等に打っています。
2018年は多くの主力選手がセオリー関係なく左右の投手を攻略していました。
「球界のセオリー」が通じない選手も多い
セオリー通りに「左投手に左打者は不利」なのは野間峻祥選手。
また、「右投手に右打者は不利」なのは菊池涼介選手とサビエル・バティスタ選手。
つまり、球界のセオリー通りだった選手はこの3人に絞られました。
逆にセオリーに反した選手もいました。
「左投手に左打者は不利」を覆したのは丸佳浩選手。
2018年に関しては、全くセオリーが通用しない選手と言える。
丸佳浩・鈴木誠也・會澤翼・西川龍馬・松山竜平選手は左右ともに.280~.320台を記録。
このように、顕著に左右どちらかが苦手な選手はレギュラークラスにはいません。
1年通じて試合に出る条件としては、この辺りをクリアする必要があります。
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① 最終的には個々の能力による
ここまで見てきた通り、あまりセオリー通りの選手はいません。
そう考えると、投手によるスタメンの使い分けがどれだけ必要なのでしょうか。
確かに、セオリー通りの選手に対してはそのような戦術も必要かと思います。
反面、特に苦手としていないのにスタメンから外されている選手もいます。
最終的にはセオリーよりも個々の特性に合わせた選択が必要となります。
様々な状況をデータや本人の感覚と合わせながら適応する必要があります。
なんとなくで「セオリー通り」では少々味気ない起用法と言えないでしょうか。
セオリーにこだわった結果、結局まったく打てないでは意味がないですから。
セオリーにこだわり打線が機能しない場面は野村謙二郎監督時代によく見ました。
ジグザグ打線、左対右、右対左にこだわり、3点が取れない試合が多かったですね。
② セオリーにこだわることで選手の成長を阻害する
セオリーにこだわった場合、選手の成長にも影響します。
例えば、右打者は対戦が左投手ばかりになると、右投手との対戦が減ります。
そうなった場合、偏った経験ばかりが積み上がることになってきます。
元々右投手が苦手だった場合、課題を克服する機会も失ってしまいます。
将来のレギュラー候補であるならば、なおさら深刻な問題となってきます。
もちろん若いうちから控えタイプの選手はそれでも良いでしょう。
代打や守備固めのような選手であれば大きな問題ではないかも知れません。
彼らは「スーパーサブ」「スペシャリスト」としての役割があります。
しかし、先を見据えた場合、チームには我慢が必要な選手もいます。
セオリーばかりにこだわると、レギュラー選手が育ちにくい環境にもなる。
特に選手流出の多いチームでは、常に気を付けていないといけません。
パ・リーグでは西武とオリックス、セ・リーグではカープがそうでしょう。
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今回のまとめ
今回は打撃面での球界のセオリーについて話を進めました。
紹介した通り、選手個々で特性が違い、打撃成績は様々です。
セオリー通りの選手にはセオリー通り適応するのもひとつの手です。
しかし、結果が出ないにも関わらずそれに拘る必要は全くない。
状況やデータ、本人の感覚などに考慮した選手起用も必要。
本当の実力が試される2019年、緒方孝市監督の腕の見せ所に期待しましょう。
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